「久し振りだね。リピート神、紅茶神。立派に育ったねぇ」

 

「その物言いだと年寄りみたいだよ、ルカ」

 

「そう?まぁ、実年齢を考えると僕たち、お爺ちゃんみたいなものだよ、兄さん」

 

「ふふ、それもそうだね。ハンナの中で僕も彼らを見ていたけれど、本当に、精神的に人であった頃よりも大きく育っていて僕も嬉しいよ」

 

緊迫状態から一変、和やかに双子トークを始めるルトとルカにどう反応したものかと頭を悩ませるリピート神の隣で、紅茶神は苦笑交じりに口を開く。

 

「二人が仲良しなのはよく解ったわ。それで?ルトちゃんの計画って何のことなの?」

 

「嗚呼、それは…」

 

ルトは、静かにあの日を視た。

 

 

***

 

この世界に、底などあるのだろうか。

 

そんなことを、落下しながらふと思ったけれど、応える声は当然無く…

 

「あるんじゃない?」

 

おや。

 

「僕、声に出してた?」

 

「うん、ばっちり。ていうか、自分がいまどういう状況か解ってる?」

 

勿論だよ、と僕が頷いて見せると「そう」と素っ気無い返事が返って来る。

 

「君は僕に隠し事をしていたけれど、僕も実は隠していることがあるんだ。底に着くまでにはまだ時間があるようだし、聞いてくれるかい?」

 

「………。いいよ、どうせ底に着くまでは俺も何も出来ないしね」

 

どうやら悪魔は、僕が全て見通していることを察したらしい。

 

その上でまだ彼は、僕を手中に収めようと考えている。

 

「ありがとう。……まぁ、正確には思い出してもらうんだけど」

 

悪魔へと手を伸ばし、引き寄せて。

 

耳元で、僕にしか解らない言葉を囁いた。

 

『僕はこの世の全てを見通す目を持っている。この目で多くの“もしもの未来”を視ているけれど、どの未来でも僕はいつかハンナという女性に転生する。彼女の旅は永く、そしてあまりにも険しいもので、その過酷な旅の果てに待つのは、安寧ではなく暴力的な絶望でしかない』

 

『だから僕は、彼女に生まれ変わる前の時間を何度もやり直すことにしたんだ。そうしたらいつか、彼女にとって最も良い結末に辿り着く未来を視るかもしれないからね』

 

『ここで、君にお願いがあるんだ。その未来を視た、何度目かの僕にはきっと“神様”を欺くための協力者を必要とするだろう。君が、協力者として彼女を助けてあげてほしい』

 

『具体的にどうすればいいのか、それはまだ良い結末を辿る未来を視ていない僕には解らない。それを知った僕に聞いておくれ。それまでは、この話を忘れてもらうよ』