「……堕天使。話が違うんだけど?多少痛めつけるとこまでは了承したけど、御前いま本気で殺ろうとしたでしょ」
痛みを誤魔化すように口角を上げるソレ―――悪魔の姿を戦神越しに見た天使は露骨に不機嫌な顔をする。
「ルカを手にするまで、君は私に手を貸すんじゃなかったの」
「嗚呼、貸すとは言ったよ。だけど、ルトもハンナも殺していいなんて一言も言ってない」
悪魔の回答が余程気に入らなかったらしい。
すぐさま槍を二人から引き抜くと悪魔の隣に回り込んで
「邪魔するなら、死ねばいいよ。“Bad End:無残な最期”」
掌から魔力を圧縮した弾を飛ばし、悪魔を撃ち抜いた。
「ッ……あは、何で俺をキャッチしてんの、アンタ」
リピート神は弾の威力で遠くまで体が飛ばされそうになった悪魔を咄嗟に受け止め、肩を貸しながらここからどうすれば、と思案する。
彼がそうしている間に大剣を手にした戦神は、二人に気を取られている天使に向け全力で振り下ろすもあっさりかわされ、ルトに刃先が向けられる。
「させるか…!」
次の一撃をと大剣を振り被った瞬間、
「“Bad End:英雄殺し”!」
罠だったのか、一瞬で槍は戦神の心臓を穿つ。
「マヌエル…!」
「……がはッ…行け。この…、僅かな隙を逃すな…ッ!」
人間であれば即死していただろう。
強靭な体を持つ神である戦神────マヌエルは、天使がこの槍を手放さないことに気付いていた。
故に、そう易々と引き抜かれまいと最後の力を込めて槍を掴み、傍にいるルトに、そして生き残っている神々に向け叫んだ。
「絶対に、立ち止まるな!!」
「ッ、…紅茶神、リピート神!ルトさんをお願いします!」
杖をしっかり両手で握って、ユカ神は天使に突っ込んでいく。
(この体じゃ足手纏いになるだけ。なら最後の悪足掻きをさせてもらわないと、ね)
「イネス…!」
行ってほしくない、そんな思いを込めてユカ神の人であった頃の名前を呟くルトの声が届いたのか、ユカ神はいつも通りの不敵な笑みを浮かべた。
「アナタの旅に、幸あらんことを!立ち止まらないで、とっとと行ってください!」
「……行きましょう、ルトちゃん。リピートちゃんも行くわよ!」
うっすらと涙を滲ませているルトの腕を引いて、紅茶神はリピート神の傍まで行くと人目につかない山の奥を一先ず目指すべくその場を離脱した。