■六章
忌々しげに、天使は呟く。
「そいつを差し出しさえすれば、死ぬことなどなかったのに。どうしてお前たちは邪魔をするの」
神々の背に隠されていたルトは、彼等の隙間から天使の様子を窺いつつ
(あと5分で、彼が来る。それまで時間稼ぎ出来れば…)
天上界からこちらに向かって飛んでくるあの神を視た。
ルトが口を開こうとしたとき、紅茶神は静かに天使に向かって語り掛ける。
「聞かせてほしいのだけれど、貴女はエンドちゃん?それとも、ルトちゃんのように、別の誰かなのかしら」
「……、私は創世時代より存在している天使。エンド神という名前を持つ彼奴とは別物だよ」
意外にも素直に答える天使。
会話が成立するなら、と紅茶神は続ける。
「そう…どうしてルトちゃんを狙っているの?」
「邪魔だから。ルトがいるから、あの人はいつまでもルトに執着して私を見てくれない」
「貴女は誰かに自分を見てもらい、だけどその人はルトちゃんを見ている、それが気に入らないのね」
「そういうことになるね」
こくりと頷く。
クズ神、カス神は鼻で笑った。
「なんだ、てっきり何かしらあってルトかゲドウ神を恨んでるのかと思ってたけど」
「子どもみたいに駄々こねてるだけじゃない」
「二人からしてみればいい迷惑よね」
「全くだよね、エンド神も巻き添え食らってるし。ていうか本当不憫だよねあの人」
この姉弟の煽り癖をよく知っている神々は「嗚呼、言っちゃったよ」と言いたげに盛大な溜め息を吐く。
姉弟は不満げな表情で
「なんで皆溜め息吐くのさ」
「俺たち変なこと言った?言ってないよね?事実じゃん」
神々を見上げた。
その隙をついて、僅かにだがムッとした様子の天使は槍の切っ先をカス神に向ける。
「余所見しちゃダメよ、貴方たち」
ギリギリのところで紅茶神がカス神の腕を引き、彼等の後ろにいたルトの前には天上界から戻ってきた戦神が巨大な盾を構えて立っていた。
「遅くなってすまない、無事か」
戦神は神々の顔を見ていくと、ふとサカダチ神とブログ神の姿が見えず首を傾げる。
それを察してか「……あの二人は、」と言い辛そうにルトが口を開くが
「……理解した」
短く答え、その先の言葉は言わせないようにした。
彼の等身程の大きさのある盾に見覚えがあるのか、天使は戦神に鋭い視線を向ける。
「この槍ですら通さない盾…戦神でありながらそんなものを持ち出してでも、ルトを守るっていうの?」