「………安心してください、一応私も神なので…貴方を逃がすまではくたばりません、から…」

 

ユカ神は血を吐き捨てるとルトから離れ、杖を支えに立つと悪魔を囲うように魔法の壁を展開し、不敵に口角を上げてみせる。

 

「私は床の神ですけど、地面さえあればこっちのものなんですよね。…“バン!”」

 

コツリ、杖の先を地面にぶつけると悪魔の足元が音もなく爆発する。

 

正確には、壁の中の音は遮断されているため彼女たちの耳には届かない。

 

「今のうちに逃げますよ…!」

 

中で蠢く朱色の炎に背を向け、二人は走り出す。

 

エンド神の姿をしたソレは押さえていた右腕を出し、空中に赤い魔法陣を展開すれば二人の背を目掛けて無数の針のようなものを撃った。

 

「やばッ…」

 

ルトを庇うように抱き締めて地面に転がるユカ神、そんな彼女と擦れ違いソレの前に飛び出す二つの影。

 

「よーし、二人とも生きてるな?」

 

「……、セーフ」

 

さらりと靡くプラチナブロンドの髪、薔薇を映したような赤い瞳。

 

顔のよく似た、ヴァンパイアの双子────ローウェル三兄妹のウォーレスとフェリシアは見えない壁を張って二人を守りながら言う。

 

「事情は全く分からないけど、まぁどうやらアンタらが妙なのに襲われてることだけは理解したんでな。余計なお世話かもしれないけど、此奴らの相手は俺たちに任せて行け」

 

「……。僕たち、それなりに強いから。安心して行っていいよ」

 

双子の後にやって来た三兄妹の末っ子、エリスは傷だらけのユカ神を抱き起して

 

「またお会いしましたね、お嬢さん。再会を喜びたいところですが、今は兄たちのサポートに専念しなくてはならないので…今度、良ければ一緒にお茶でも。だからどうか、逃げ延びてくださいね」

 

どこかゲドウ神を思わせる、美しい笑みを向けた。

 

「……すみません、ありがとうござます!」

 

「ありがとう、ローウェルの末裔たち」

 

そうしてまた、二人は立ち上がるとブログ神の家目掛け、走っていった。

 

ユカ神とルトを見送ると双子はにぃ、と口角を上げて壁の中から既に脱出した悪魔と、フードを被ったソレに剣先を向ける。

 

「こんな大物とやり合うのはいつ振りだろうなァ、フェリシア」

 

「………、さぁ。数十年、振り?」

 

「二人とも、テンションが振り切れてるからってやり過ぎないでくださいね?」

 

戦闘狂の兄と姉に声を掛けると、エリスも銃を構えた。

 

「手ェ抜いたら御前等夕食抜きだからな!」

 

「「分かってる!」」

 

それを合図に、三兄妹は世界最古の悪魔とソレ────堕ちた天使に挑んでいった。