霧谷兄妹が家を出た頃、ユカ神は今朝からどことなく落ち着きのないルトを連れ出して近所の公園へ向かっていた。
「昨日通ったときに、白色の綺麗な花が沢山咲いていたので、是非貴方にも見てもらおうかと」
「ふふ、楽しみだ。どんな花なんだろう」
「それは見てのお楽しみです!」
ふふん、と得意気な表情で案内するユカ神の横顔にクスリと笑むと、ルトは急に「待って」と立ち止まる。
何かを警戒するようにじっと空を見上げているルトに声を掛けようとユカ神が腕を伸ばした瞬間、彼の視線の先から一筋の光が二人の間を掠め飛んできた。
「……今すぐ僕から離れて。あの子たちが来た」
次の光が真っ直ぐルトに向かって飛んでくるのが見えると、ユカ神は答えるより先に彼の腕を引いて全速力で空を飛ぶ。
「いきなり攻撃するとかおかしくありません??堕天使どころか悪魔じゃないですかもう」
「強ち間違いではないかもね?」
ユカ神たちの進行方向に先回りしていたらしい。
悪魔は意地悪く笑うと
「捕まえた」
銃口をルトの右胸に向け、引き金を引いた。
しかし悪魔が撃つより早く、ユカ神が靴の爪先で蹴り上げて銃口を逸らしたため、銀の弾はルトではなくユカ神の頬を掠めただけだった。
「ッ、この超絶可愛いユカ神様の顔に傷をつけるとはいい度胸ですね、悪魔の分際で」
「いやいや、君が銃口を逸らさなければそうはならなかったんじゃないかな」
酷い言いがかりだ、と言いたげな表情の悪魔を睨むと右手側に魔法陣を展開し、彼女の身長ほどの大きな杖を形成、手にする、が。
「ウ、ッア...!」
ユカ神の手首を、黒いフードを目深に被った何者かが槍で貫く。
その姿に見覚えがあるユカ神は目を見開いた。
「…へぇ、そういうこと、ですか。まさかアナタが堕ちた天使だったとはね…エンド神」
ソレは何も答えず槍を引き抜くとユカ神を蹴り飛ばして、彼女の後ろにいたルトに狙いを定める。
槍先がルトの左胸へと伸びたそのとき、まるで抗うようにソレは左手で槍を握る右腕を押さえ、小さく呻いた。
その隙をついて、地面に叩きつけられていたユカ神の肩を背負ってどうにかルトは逃走を試みようとするも、またも悪魔がその先で笑っていた。