「……近頃、噂程度ですが創世神話の生ける伝説たちが地上に度々姿を現していると。その話を耳にしてから何故か貴方が一番贔屓していらっしゃる、ゲドウ神の周りで不可解なことが起きています」

 

「そうだね。君が思っている通り、どれもこれも彼等が引き起こしていることだ」

 

「……教えてください。ゲドウ神を襲撃したのは、一体誰なんですか」

 

ルカは数拍の間を空けると、眉一つ動かさず「エンド神。…いいや、彼女の中で眠っていた堕天使だよ」と告げ、戦神に背を向ける。

 

「今すぐ戻って、彼女の傍についていた方が良い。僕はまだやることがあるから傍にいけないけど…嗚呼、そうだ。堕天使が持つ槍は神をも貫く。アレに対抗するには今のところ悪魔の魔法壁と君が持つ盾しかないよ」

 

「……。ゲドウ神が、…いや、ゲドウ神の前世が貴方の兄というのは、事実ですか」

 

「うん、そうだよ。だから僕はゲドウ神を贔屓している」

 

堂々と「贔屓している」と言い切るルカに若干呆れつつ、ルトの意識が浮上し彼の話を聞いた時からずっとあった疑問をルカにぶつけた。

 

「ならば何故、ルト様は何もなさらない?」

 

「どういう意味かな」

 

「……貴方は過去を見る目を持っている。そして、片割れであるルト様は全てを見通す。ということは、創世時代に悲劇を食い止めることが出来たのでは。この本の通りなら、まるで全てを知った上で自ら落ちて行ったように聞こえてならない。…彼の人は一体、何を考えているんですか?」

 

「……それは、その本の著者であるクロウ、そして僕が知りたいことだよ。兄さんが何を考えているのか、それだけは全く分からない。けれど…このままではまた、あの子は己の憎しみに捕らわれ衝動のままにゲドウ神を襲いかねない。それは確かだ。────だから、もうお行き。今彼女を守れるのは君しかいないんだから」

 

 

 

 

 

 

戦神が城を後にし、ルカは彼を見送ると中庭で剪定をしていたヴァレルに声を掛けた。

 

「ヴァレル」

 

「神祖様。……彼は」

 

「ゲドウ神の元へ戻っていったよ。ふふ、君、彼に大ファンですって結局今回も言わなかったんだね?」

 

クスリと笑うルカを一瞥すればヴァレルは手を休めることなく「憧れというのは、内に秘めるモノです」と答える。

 

「それもまた、一つの在り方だね」

 

ルカは納得したように呟き

 

「嗚呼、また数日留守にするから、任せたよ」

 

用件を告げて中庭を出たのだった。