「フ…フフ、アハハハハハ!」

 

地響きが止み、ぽっかりと空いた大きな穴を見て天使は気が狂ったように笑う。

 

「やった!邪魔者はいなくなった!これで私の願いは、」

 

「────願いが、何だって?」

 

怒気を孕んだ低い声が、森に響いた。

 

ぴたりと笑い声が止むと、その人は一歩、天使に近付いた。

 

「柘榴を口にしただけでなく、兄さんを騙して世界の底へ堕としてしまうなんて。とても許されることじゃない」

 

先程まで興奮で腹の内が熱かったというのに、ひやりと凍えそうなほど冷たい感覚に身震いしながら、天使は振り返る。

 

そこにいたのは、明らかに怒っているルカが立っていた。

 

「御前の罪を今ここで罰する。神の加護も何もない世界の底で、一人彷徨いなさい」

 

天使の目の前まで来ると、手の平をルカの頭に乗せ。

 

「僕の赦しを得るまで、箱庭に立ち入ることを禁ずる」

 

そう告げて、穴の中へ突き落した。

 

「!待って、」

 

─────私は、ただ貴方と二人で生きたかっただけなのに。

 

真っ逆さまに堕ちていきながら、叫ぶ。

 

しかしその声が彼に届くことはなく、箱庭に戻ろうと翼を広げるも、先程ルカが何かをしたのか頭が重く、飛ぶことが出来ない。

 

「……ッ」

 

そっと頭上に手を彷徨わせると刺々しい茨のような輪がそこにあった。

 

どうやらこれが重りのようになっているらしい。

 

それだけではない。

 

焼けつくような痛みが突如右足首を襲い、何とか視線をやると黒い足枷がついていた。

 

「………嗚呼、あの人は本気で私を追放したんだ」

 

宙に舞う雫と、燦々と輝く太陽を眺めて。

 

絶望したように、天使は口元に笑みを浮かべて、堕天した。

 

 

***

 

 

「追放された天使は堕天使となり、数億年…いや、数十億年かな。とにかく永い時間地上を彷徨った。それが、僕が彼女に与えた罰。そして、18世紀。僕は彼女を赦し、箱庭での一切の記憶に鍵を掛け…神祖の祝福を受けた神、エンド神として“自由”を与えたんだ。とはいえ、ゲドウ神たちのように一度死んでいるわけではないから、彼女は神でありながら今も堕天使なんだけどね」

 

本を読み終え、そっと閉じたところで、天上界に戻って来ていたルカは戦神に語った。