■四章
天上界、神祖が住まう古城。
この世界の全ての記録や天上界の作家が書いた書物などが保管されている図書室、そこにあるというある一冊の本を探すため、戦神は本来限られた者しか立ち入れない城内の廊下を歩いていた。
その隣にいるのは、城の管理の一切を任されている獅子頭の精霊、ヴァレル。
「お目当ての本はDの棚、上から二段目に確かあるはずです。…では、ごゆっくり」
図書室に着くやいなやヴァレルは素っ気無く言うと、深々と頭を下げ立ち去った。
彼の背が見えなくなると戦神は早速目当ての本を探し、一冊の古びた本を手に取る。
著者はどうやらクロウという、かつてルトとルカの相談役だった人物のよう。
紙を破ってしまわないよう、戦神は慎重にページを捲った。
***
創世神話崩壊、八日前。
悪魔はここ数十年の間、ずっと考えていた。
どうすれば、最愛の人であるルトを自分だけのモノにできるのかと。
思考して、思考して…
そんな時、天使が何かを思い悩んでいるようだった。
彼女の話を聞いてみると
「あの人…ルカ様を、深く愛してる。きっとあの人もそれなりには自分を愛しているだろうけれど、ルカ様の特別はルト様であって自分じゃない。ずっとルト様のことを羨ましく思っていたけれど、この頃憎悪のような感情がふつふつと湧き出してきて、発狂しそうになるんだ。どんどん自分の心が、思考が、醜くなっていくことが酷く恐ろしくて夜も眠れない」
どうやら天使もまた、神様に恋をしていたらしい。
その事実を知った悪魔は閃いた。
『ルトを無力化し、天上界の一部分と共に堕とせばいい。彼の魂を俺が回収し、落ちて大地となったその地で暮らすの。残されたルカと天使は天上界で一緒に。そうすれば、もう自分たちは苦しまなくて済むんじゃないか』
彼のこの結論が、悲劇を生んだ。
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その日は、青が太陽の光に溶けて透き通る水のような、そんな空の色をしていた。
穏やかな昼下がり、薔薇園のベンチで微睡んでいるルトにそうっと忍び寄るのは、白を纏う天使の少女。
「……ルト様。ルト様、起きてください」
「……ん…?」
天使に体を揺さぶられて目を覚ましたルトは、くあ、と欠伸を一つ洩らすと「どうしたの?」と首を傾けた。
「それが、子どもたちと森まで遊びに行ったんですが、ヤンシだけ迷子になってしまって…ルカ様に子どもたちを見てもらって、悪魔と探しているのですが中々見つからず。ゆっくりしているところ申し訳ないのですが、夜になるまでに見つけてあげたいので、一緒に探していただけないでしょうか?」
「おや、それは大変だ。いいよ、どの辺りではぐれたかわかる?」
「はい、大体ですけれど…ご案内します」
「うん、お願い」
天使はルトの手を取って、城から南に少し行ったところにある森へと向かった。