午前二時過ぎ。

 

一体どこから侵入したのか、寝息をたてて眠っている橘兄妹の側に三神は立つと、彼の足元に黄緑色に輝く線で描かれた魔法陣が展開される。

 

ぼそりと呪文のようなものを呟くと、兄妹の胸元から青い花弁が仄かに光を放ちながら浮かび上がってきた。

 

三神は二枚の花弁を摘まみ取り

 

「トヤア、ナツセ。君たちの力を少し分けてね」

 

目を覚ます気配のない二人に向け、小さく笑んだ。

 

 

 

 

 

 

橘家を後にした三神は、屋根の上で硝子瓶いっぱいに詰め込んだ青い花弁を眺める。

 

「霧谷夜明、霧谷真昼、橘綾斗、橘刹那、薔薇屋敷の使用人たちにローウェル家。これまでにゲドウ神が関わったことのある人たちの元を回ったけど、やっぱりまだ足りないか…」

 

月の光を含んだ花弁は青、というより白く、宝石のように輝いている。

 

「……こんなとき、彼女がいてくれたらきっと」

 

全部、上手くいっただろうに。

 

今は亡き国なってしまったセイレシア島の森で“エデンの魔女”と呼ばれているらしい旧友の笑みが脳裏に浮かび、ついそんなことを考えてしまう。

 

しかし、ここに旧友はいないし、彼女を頼るときがあるとすればもっと先だろう。

 

三神は難しい表情を暫し浮かべていたが、やがて彼の側に突如出来た空間の歪の中に瓶を入れ

 

「どれだけの神々が協力してくれるかわからないけれど、天上界も回ってみるしかないかな」

 

ふわりと宙に浮かび、空の彼方へ飛んで行った。