最近、夢を見ること。

 

目覚めてすぐは記憶が混濁し、意識は過去の自分のモノになっていること。

 

そして、最近自分の記憶ではない“自分”の意識に、長くて数分なること。

 

このままでは自分の知らない前世に意識を持っていかれるのではないか、と、ゲドウ神は話した。

 

真剣に最後まで黙って聞いていたエンド神は腕を組むと

 

「……一時的な記憶障害、にしては妙な話だな」

 

独り言のように呟いた。

 

「えぇ、あと……」

 

じっと、エンド神を見つめて。

 

しかし、何と言うべきか迷い、結局「いえ、何でもありません」と口を閉じた。

 

「……日記を書いてみてはどうだ。夢の内容と、一日の出来事を綴っておけば何かの役に立つかもしれん。記憶の整理という意味でも良いだろう」

 

「日記、ですか。ふむ…そうですね。もし何かを忘れていても読み返せば思い出すでしょうし、今夜から書いてみます」

 

根本的な解決にはならないが、ゲドウ神は頷いて立ち上がり「ありがとうございます。そろそろ家に戻りますね」とエンド神の部屋を後にする。

 

部屋に残されたエンド神はふう、と安堵したように息を吐き。

 

すっかり冷めてしまった緑茶を啜っては、少しは役に立てたのではないかと口元に笑みを浮かべた。

 

 

***

 

 

その日の夜。

 

早速日記帳に一日の出来事と今朝の夢の内容を覚えている範囲で書きながら、あることを思い出していた。

 

『────嗚呼、どこか懐かしい。御前は、我の知らない我を知っているだろうか』

 

イタリアの、ある大きな教会でエンド神と初めて出会った日。

 

ゲドウ神を見た第一声が、それだった。

 

あのときはいまいちその言葉の意味が分からず『私は君を知らない。知るために、此処まで来たのです』と答えたが、後にエンド神には生前の記憶が無いことを知り、もしかしたら素顔の彼と生前出会ったことがあるのかもしれない、と少し前まで思っていたが。

 

「私の知らない私と、彼の知らない彼は。何かしらの縁があったのかもしれませんね」

 

今朝、夢に現れた白い子供とエンド神の気配を重ねて呟くと。

 

ぱたりと、日記帳を閉じた。