この世界には、千里眼と呼ばれる目を持つ者がごく僅かではあるが存在している。
そのうちの一人が、ゲドウ神。
彼女の千里眼は“全てを見通す”能力だが、彼女の意思で視たいときに視えるわけではない。
また、どうも彼女の場合は能力が不安定らしく、ここ数百年ほどは何も視えていなかった。
「………」
原始の悪魔と対峙して以来、眠るたびに少しずつだが記憶が過去に遡っているようで。
目覚めたとき、意識は過去の自分のモノであることが多い。
今も目を覚ましたばかりの彼女は、寝室として使っている日暮の部屋をぐるりと見回して、首を傾げた。
「此処は一体…」
そしてはっとする。
「……嗚呼、また意識が見知らぬ過去に戻っていましたか」
千里眼とこの現象に、一件何の繋がりもないように思うが。
ゲドウ神は日に日に意識が過去に戻り、昨夜ついに自分の知らない“過去”────つまり、人間でいうところの前世にまで遡っていたことに気付き、これは千里眼の能力の一種ではないかと考えている。
つまるところ、先祖返しだ。
たった数分前まで見ていた夢の内容をゲドウ神は思い出しながら、ぼんやりと思考する。
「あの子供の気配…彼に似ていたような」
夢の中で自分の手を引っ張っていく白い子供。
最初は幼い日暮かと思ったが、振り返り、何事かを言ったその子供は日暮ではなく全くの別人だった。
しかしその子供の気配がある神に似ている気がして…ゲドウ神はそれを確かめるべく霧谷家を後にした。
***
「………」
「………」
エンド神の部屋までやって来たゲドウ神は、無言で緑茶を啜り、正面で気まずそうに視線を彷徨わせているエンド神を眺めた。
(一体何だと言うんだ…)
何の連絡もなく突然やって来た女神を部屋に通し、とりあえず数日前お隣さんから貰った緑茶を淹れて出してみたエンド神は、ずっと何も言わずに座っている彼女に大困惑していた。
「………。どうか、したのか」
「………」
「………。紅茶の方が、やはり良かったか」
「………、いえ」
何を言ってもあまり反応を示さないゲドウ神に、エンド神も暫し無言で彼女を観察するように見る。
すると、いつもならよく笑う彼女の表情が、今日はまるで無機質な人形の顔に思え、様子がおかしいことに気付いた。
「………我では、力にはなれないかもしれないが…その。話くらいは、聞けるぞ」
「………、珍しいですね。そんなこと言うなんて」
何の取り柄もない自分が彼女にこんなことを言うのは、傲慢ではないか。
そう、エンド神は内心思うも、何やかんやで付き合いがそれなりに長くなってきた彼女をこのまま放っておくのは何とも言えなかった。
何より、こういうとき普段のゲドウ神ならばまずサカダチ神か紅茶神の元へでも行くだろうに、どういうわけか凄く仲が良いわけでもないエンド神の元にやって来たのだ。
エンド神はそれが少し、嬉しかった。
だから、少しでも力になれればと、ゲドウ神を真っ直ぐ見据えて「お前には、日頃世話になっている。その礼だ」と告げた。
「実は、最近─────」
***