■四章

 

 

 

ハンナとオスカーが出会って、一年が経とうとした頃。

 

冬の厳しい寒さが嘘のように空気は春の陽気で柔らかく、そして暖かくなり、フローラは数ヵ月振りにハンナをシルヴェスター邸に招いて庭のガボゼで二人だけの茶会を開いた。

 

「それでね、ハンナによく似合いそうなドレスと靴を街で見つけたから、今度一緒に見に行ってみない?」

 

「それは構わないけれど、君が選んでくれるものは私には可愛すぎて…似合わなかったらとヒヤヒヤするんですが」

 

「大丈夫よ!ハンナは何を着ても可愛いに決まってる。私が保障するわ」

 

「ふふ、ありがとう」

 

紅茶を一口含むと、ハンナはちらりとフローラを見る。

 

視線に気付いたフローラは不思議そうな顔で彼女を見つめ返し、彼女が何か言うのを待った。

 

「……ええっと、君に報告しておきたいことがあって」

 

「あら、何かしら」

 

「実は、―――――」

 

「……え?」

 

ざぁ、と風で木の葉が擦れる音がする。

 

フローラはそれをぼんやりと聞きながら、頭の中が真っ白になっていくのを感じた。

 

『実は、オスカーと明日、結婚することになりました』

 

(だって、ハンナは婚約する気ないって……おじ様からもそう聞いてたし、お兄様だってハンナとは仲良しだって言うだけでそういう感じは出さなかったから安心してたのに…)

 

「嘘、でしょう?」

 

フローラの声は、震えていた。

 

彼女の様子が少し可笑しいことに気付き、「どうしました?」とハンナは訊ねる。

 

「……私、私ね。貴女のこと、ずっと好きだったの。大好きだった。だけど女同士じゃ結婚は出来ないからって諦めて…ハンナが誰とも結婚する気ないって知ってたから、ならこのままの関係でもいいやって…でも、そう…結婚、してしまうのね」

 

「フローラ…」

 

「……ねぇ、ハンナ。私のこと、好き?」

 

「………」

 

恐らくこれは、告白なのだろう。

 

そう、ハンナは捉えて答えを思案する。

 

暫くしてから

 

「良き友として、好きですよ。これから先も、それは変わりません」

 

はっきり、そう答えた。

 

「……そう。それが、ハンナの答えなの」

 

俯くと同時に、フローラの膝の上に温かな雨が降る。

 

それに気付いてか、ハンナはそっと立ち上がって彼女のティーカップの側にハンカチを置くと、何も言わずにその場をあとにした。