ゲドウ神の体を包み込むように纏わりつく黒い影。
ソレのモノなのか定かではないが、ゲドウ神が持つ魔力に異質な力が混ざるような感覚に悪魔たちはざわめいた。
多くの視線を受けながらソレはゆらりと揺らめくと、そこにいる全ての生命に告げる。
「――――これより、闇の国の者等を一掃する」
ゲドウ神の真後ろに、紫と黒を混ぜたような禍々しい色の影で出来た、巨大な矢のようなものが現れ。
彼女の体を貫いた。
抉れた腹から、口から、傷口から、ゲドウ神の血が流れ出ていく。
足元を濡らす大量の血は意思を持った蛇のように床を這い、教会の敷地ほどの大きさの魔法陣を描けば、赤黒い線から無数の腕が伸びて悪魔たちを捕らえていく。
そして捕らえられた悪魔たちは悲鳴を上げる時間すらも与えられずに、霧散し消滅した。
奏もまた触手にも見える腕に拘束されているが、他の悪魔とは格が違うためか消滅はしていない。
だがいくら創世神話の生ける伝説といえど、得体の知れないモノの対処方法など知るわけもなく、
「これはやばいかもな…」
額から冷や汗を流し、焦りの色を見せ始める。
「ハンナ、話し合おう?下手したら俺まで消滅するって、いや本当にこれはダメ」
未だ影を纏っているゲドウ神を見やると、どうやら正気を取り戻したらしく、しかし最初に現れたときよりも殺気を顕わにして奏を見つめていた。
「“天秤は傾いた。混沌の化身との盟約により、深淵の死者は座の前にて膝を折り、我が声を聞け。彼の者に久遠の呪いを。手向けとするは我が血華(けっか)。我の名は―――”」
「そこまでじゃ」
ゲドウ神と奏の間に、突如二つの影が入る。
一人は幻覚をやっと解除した戦神、そしてもう一人はユカ神が纏っているようなワンピースを身に着け、長いプラチナブロンドの髪を揺らす可憐な少女―――否、永い時を生きるヴァンパイアの女帝、ヴェロニカ=ローウェル、その人である。