英国、ある教会裏の茂み。

 

「本当に、いいの?」

 

金糸の髪を揺らし、紫の瞳を瞬かせて悪魔の一人が緩く首を傾げる。

 

リピート神は無表情で頷くだけで何も答えない。

 

今は誰かと和やかに雑談をする気分にはなれないのだ。

 

そんなことはお構いないし金糸の悪魔は更に訊ねた。

 

「今なら引き返せるわよ?私たちはあの方には逆らえないけれど、あんたを逃がしてあげることくらいは出来る」

 

「………」

 

「ね、あんた序列順位が高いんでしょう?そんな神が、女神の為に……いいえ、いくら待っても振り向いてくれない女の為に人間を虐殺しようだなんて、馬鹿らしいと思わない?」

 

「………」

 

「そんな女、放っておいて。あんたが望むなら女に関する記憶は全部食べてあげる。だから、私と一緒にここから離脱しましょう?」

 

紫の瞳に、赤い光が煌めく。

 

伊月 奏、否―――創世神話の生ける伝説である最古の悪魔がリピート神にかけた催眠を完全に解くことは出来ないが、リピート神の中にある弱い心に付け込み、催眠を上書をすることは出来る。

 

もしリピート神が金糸の悪魔の手を取れば契約は成立し、上書き後にタイミングを見計らって彼の魂を食らう算段だ。

 

彼の返答を待ちながら裏口に視線を向けようとしたとき。

 

「………、引き返さないッスよ」

 

「ふーん、どうして?」

 

「だって……あの人は、俺の神様だから」

 

ここに来て初めて、リピート神は表情を崩した。

 

(答えになってないわ)

 

へらりと、今にも泣き出しそうな顔で笑う神を見て、金糸の悪魔は呆れたように肩を竦める。

 

正面を見張っていた黒髪の悪魔が

 

「無駄話はその辺にしておけ。時間だ」

 

二人に声を掛けると、彼は瞳を閉じて深呼吸をする。

 

そして。

 

「――――始めよう」

 

(神様の為の、復讐劇を)

 

リピート神は、瞳を開いた。