(……大丈夫。冷静さを保っていれば、熱さも苦しさも感じることはない)

 

そう、自分に言い聞かせる。

 

肌が粟立つような感覚が全身を覆い、火の中にいるのにまるで冷凍庫の中にいるような異常な寒気に身を震わせながら、ゲドウ神は取り残された子供を探した。

 

(大丈夫。これは、私を裁くための聖火ではない)

 

一歩進むたびに、遠い日の記憶(トラウマ)が脳内で断片的に再生される。

 

それでも奥へと行くと、小さな影が地面に倒れているのが見え駆け寄った。

 

「……息はあるようですね」

 

意識は失っているものの、小さな胸は上下に動いている。

 

ゲドウ神はほっと安心したように息を吐くと、自身が羽織っていた特別な素材で出来たコートで子供を包むと抱き上げ、急いで外を目指し駆けていく。

 

「大丈夫。御前は、私が救ってあげますよ」

 

―――こんな、熱くて苦しいところで死なせはしない。

 

 

***

 

 

もしかしたら人目を避けてマンションの裏口から出てくるかもしれない、とユカ神が裏へ回り込もうとしたとき。

 

「おい!子供が救助されたぞ!」

 

「何だって!?一体誰が…?」

 

火事見物をしていた野次馬たちが救急隊員に抱えられて救急車の中に入っていく子供に気付き、ざわついた。

 

「嗚呼、無事救出出来たんですね師匠。……あれ、師匠は一体いずこへ??」

 

きょろきょろと辺りを見回すと、マンションから離れていくゲドウ神の姿を見つけ慌てて駆け寄り「師匠!お疲れ様です」と声を掛ける。

 

が、彼女の青ざめた顔を見てユカ神はぎょっとした。

 

「え、師匠なんか体調悪そうですけど大丈夫です…?」

 

「……、すみません。今から君には迷惑を…掛けるか、も…」

 

ゲドウ神の体がスローモーションで倒れていくように、見えた。

 

どさり、と地面に体がぶつかる鈍い音が耳に届くと、ユカ神は一瞬何が起きたのか分からずフリーズする。

 

しかし直ぐに

 

「…っ、師匠…?」

 

軽く、細い肩を揺さぶってみる。

 

ボルドーの瞳は目蓋が固く閉ざされているせいで見えない。

 

「し、師匠!……そ、そうだ、ブログ神!ブログ神を呼んで、」

 

(嗚呼でも、意識を失ってる人から目を離すわけには…かと言って人間に助けを求めるのはちょっと、あれですよね…)

 

一体どうすれば、とおろおろとしていると―――。