■六章
「.........」
雨上がりの匂いと、誰かに頭を撫でられているような感覚。
何だか心地好くて、また意識を手放そうとしたとき、頭上から「エドワード」と名前を呼ばれた。
「.........ハンナ?」
重たい目蓋を開くと自分を見下ろす赤い目と視線が合う。
(嗚呼、これは夢なのかもしれない)
だって自分は酔っ払いに撃たれて死んだのだから。
「残念ながら、夢ではありませんよ。まぁちょっと色々ありましてね、私と同じ“神様”になったんですよ」
「......え?」
俺が、神様に?
「私よりも偉い神様からの伝言です。大切な言葉、好きな言葉、嫌いな言葉。御前を作る言葉を忘れぬために、繰り返し、リピート神として生きてごらん。だそうです」
「なんていうか、神様のネーミングセンス毎回微妙なんですよねぇ。私の“ゲドウ神”もですし」
そんなことを言って笑う彼女を見て。
まだ自分が神に生まれ変わった実感は持てないまま、しかし彼女につられて笑った。
それから、二人は共に世界を巡り。
「サカダチ神、以前少し話しましたが彼がリピート神です。ほら、挨拶なさい」
ゲドウ神は神の茶飲み友達であるサカダチ神にリピート神を紹介した。
「やぁ、リピート神。同じ神同士、仲良くしておくれ」
「初めまして、サカダチ神さん。先輩共々、宜しくお願いしますッス!」
にっこりと人懐っこい笑みを浮かべる“後輩”の姿に、ゲドウ神は思わず吹き出してしまった。
「あ、何で笑うんですか先輩!俺なんか変なこと言いました?」
「ふふ、いえ、可愛い後輩が出来たなと思って。...ふふ」
「とか言いながら凄く笑ってる...!まぁ先輩が楽しそうだからいいんスけどね」
────こうして、リピート神という一人の神が誕生したのだった。
***
■夢から醒めて、決意の朝
青年───リピート神が目を醒ますと、雨はすっかり上がり太陽が雲の間から顔を覗かせていた。
「.........」
雨音を子守唄に眠ったからだろうか、懐かしい夢を見た気がする。
「今度は、俺が」
俺が、貴女の願い───復讐を叶える番だ。
「全部終わったら帰るから。もう少しだけ待っていてくださいね。先輩」
リピート神は何も言わず日本に残してきたゲドウ神を想い、静かに笑んだ。