午後二時過ぎ。
街の携帯ショップで用事を済ませ出てきた真昼は、この後の予定を考えながら適当に歩いていると
「真昼たん!」
背後から軽く肩を叩かれ、振り返った。
「わぁ、三神たん~おひさ!こんなところで何してんのぉ?」
「今日のバイト終わったからブラブラしてた。あ、」
「そういえば」と三神は緩く首を傾けて訊ねる。
「お兄様と加藤さん?のこと、知ってる?」
「深夜たんと慧たん?」
一瞬なんのことだろう、と真昼は思考するも直ぐに「嗚呼!」と声を上げて頷いた。
「あれでしょ~?なんかぁ、やっとくっついた、みたいな?二人とも何も言わないけど、あんなの雰囲気でわかっちゃうよね~」
「お兄様はともかく、加藤さんは分かりやすいからなぁ。夜明お兄様の反応はどうよ?」
「あ~…夜明たんも前々から二人が無自覚の両想いだってことは知ってたっぽいしぃ、多分くっついたことも知ってるんだろうけど、今のところは何もないかなぁ」
深夜を心から慕っている夜明のことだ。
彼は何も言わないものの、恐らく日暮のフィアンセ事件以上に今回ダメージを負っているに違いない。
「夜明たん、大丈夫かなぁ…あとで暴走しなきゃいいんだけど~」
***
「夜明くんんんん!刹那ちゃんがぁぁぁぁ!」
「うるさい。日暮が部屋で昼寝してるから、もう少し静かにしてくれ」
霧谷家、夜明の部屋。
橘 綾斗は先日刹那と壱琉がカフェで談笑していた件について愚痴を聞いてもらおうと、大親友(だと勝手に思っている)夜明の元を訪れていた。
一通り話を聞き終え、それからずっと夜明の腹に顔を埋めて「刹那ちゃんに悪い虫がぁぁ!」と泣きついている綾斗を見下ろすと、夜明は肩を竦めてあることをぽつりと話し始めた。
「……、実は少し前に兄さんと、その幼馴染が付き合い始めて。いや、本人たちは何も言わないから俺がそう思い込んでいるだけなのかもしれないけれど…正直、最初は内心穏やかではなかった」
「………」
綾斗はぴたり、と泣き止んでじっと彼の話に耳を傾ける。
「でも、兄さんが選んだ人ならきっと間違いないし、兄さんが幸せになるならまぁいいのかなって」
「……夜明くんは大人だね。俺なら、自分が刹那ちゃんを一番幸せにするんだって思っちゃうな」
「それもまた愛の一つで、間違いではないと思う。だから、あんたが妹を自分で幸せにしたいって思うんなら俺は応援するし、話くらいならいつでも聞いてやるから」
少し雑に綾斗の頭を撫で「嗚呼でも、兄さんを慕う気持ちは変わらないし日暮は誰にもやらん」と笑った。
そんな夜明を見上げて
(同族は同族でも、やっぱり夜明くんは好きだなぁ)
「そっか。ありがとう、夜明くん」
綾斗もまた、作り笑いではなく心から笑って礼を言った。