ハロウィン一色だった街が徐々にクリスマスカラーに染まり始めた頃。

 

ローウェル三兄妹はリビングで顔を突き合わせ、「どうする?」というように視線を送り合っていた。

 

毎年10月31日にハロウィンパーティーをしている三兄妹だが、今年、その日は英国の本邸に所用で戻っていたためパーティーが出来なかった。

 

まぁ毎年やってるし、やらない年があっても別にいいかと三人とも思っていたのだが…

 

日本の別邸に帰ってきてからウォーレスは真知に、フェリシアはリースベットに、そしてエリスはヴォルフェにそのことを話すと、それぞれ微妙に反応が違うものの共通して“がっかり”したような表情をしていた、ということが数分前に判明し今に至る。

 

「おい、どうする」

 

「……、すやぁ」

 

「姉さん、起きてください」

 

「……、そーりー、昼間は眠いからつい」

 

「わかる、やっぱ昼は眠いよな。…って、んな話、いまはどうでもいい。パーティー、やった方がいいのかこれ」

 

「やるといってももう11月も半ばですよ?」

 

「そこなんだよな。思いっきりシーズン過ぎてるんだが、話を聞く限りだとお嬢ちゃんもヴォルフェも、お前達とパーティーしたいって感じだろ?真知も、興味無さそうにしてたけど多分俺の帰りを待ってたっぽいし…」

 

んー、と小さく唸りながら腕組みをする長兄に、フェリシアは眠い目を擦りながら一つ提案をした。

 

「……三人に招待状を送って、ここで盛大にパーティーやろ」

 

 

***

 

 

翌日の夜。

 

「あー…本日はお招きいただき、ありがとうございます。…ごめんウォーレス、これだけしかそれっぽい挨拶浮かばない」

 

ハロウィンパーティーの招待状を手に、屋敷に訪れた最初の客人はウォーレスの友人、加々美 真知だった。

 

「ふはっ、それだけ言えれば上出来だ。来てくれてありがとな」

 

「ん、こっちこそ招待してくれてありがとう。凄く嬉しいよ」

 

ウォーレスにわしゃりと頭を撫でられて照れくさそうに頬を掻きながら礼を言う真知を『この子、ほんと可愛いなぁ』なんて思いながら、フェリシアが眺めていると。

 

「エーリスー!」

 

勢いよくエリスに飛びつき、そのまま首元をかぷりと甘噛みしたのは――

 

「突進しないでください、ヴォルフェ」

 

「あは、ごめんごめん。いやー、会うの久々だからお前見た瞬間なんか嬉しくなっちゃってつい」

 

「そうですか。でも突進は禁止です」

 

「えー、エリス冷たいー」

 

じゃれ出す弟たちを横目に、どこかそわそわしたようにフェリシアは懐中時計を開く。――と。

 

「フェリシアー!」

 

ヴォルフェに負けずとも劣らない勢いで、リースベットは招待状を持っている手をぶんぶん振りながら駆け寄り、そのままフェリシアの胸にダイブする。

 

「遅くなってごめんね!あのね、フェリシアに着てもらいたい仮装の衣装考えてたらお家出る時間過ぎちゃってて…!怒ってない…?」

 

子犬のような目で自分を見上げてくるリースの頭を撫でると

 

「怒ってないわ。来てくれてありがとう、リース。今日は楽しんで行ってちょうだい」

 

ふふ、と微笑んだ。

 

ウォーレスはそんな妹の隣で、それぞれの客人の姿を確認するように視線を動かすと。

 

一つ咳払いし、口を開いた。

 

「今宵は、当家主催のパーティーにお越しくださり、ありがとうございます。半月遅れではございますがそれもまた一興…ヴァンパイアと過ごす一夜の夢、どうぞ最後までお楽しみください」

 

 

 

 

 

 

―――こうして、ローウェル三兄妹のハロウィンパーティーは幕を開け。

 

陽が昇るまで、飲んで騒いで、ちょっと特別な一夜を過ごしたのだった。