夏の日射しが最も鋭く肌に突き刺さるであろう、午後一時過ぎ。

 

三兄妹が現在住んでいる屋敷のティールームで、二人の令嬢が談笑しながら御茶会を楽しんでいた。

 

「海に山、プール…今年の夏はたくさん遊んだなぁ。フェリスは?おにーさんたちとどこかお出掛けした?」

 

フェリス、と呼ばれた女性――フェリシアは瞬きを一つしてこの夏の出来事を思い浮かべると

 

「天体観測と、あとお祭りに行ったわ」

 

日本に来てからの友人、リースベットの口元をハンカチで拭う。

 

「わわ、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

そっとテーブルの端にハンカチを置いたそのとき、何かを乗せたトレーを手に「フェリシア、キッチンにこれ忘れてたぞ」と、彼女の兄ウォーレスがティールームに入って来た。

 

「あら、いけない…私ったら。ありがとう」

 

「どーいたしまして。ついでだ。紅茶、淹れてやるよ」

 

人が変わったように口調や雰囲気がいつもと違う妹を気にする素振りは見せず、ただ空になった二つのティーカップをちらりと見て言うと、彼は静かに紅茶を注いでいった。

 

どちらのカップも紅茶で満たされると、先程持ってきた、ピンク色の薔薇を模ったものを表面に浮かべ「そんじゃ、ごゆっくり」と彼は出て行く。

 

「フェリスー、これなに?」

 

興味深くティーカップの中を覗き込んだあと、リースベットはフェリシアに視線を移すと首を傾げた。

 

「ローズシュガーよ。おばあさまがイギリスから送ってくれたの」

 

「ローズシュガー!こんな綺麗なお砂糖、初めて見たよ」

 

仄かに薔薇と紅茶の香りが漂い、「いい匂い~」っと幸せそうに花弁が溶けていくのを眺めているリースベット。

 

(……、喜んでくれたみたい)


 フェリシアはほっとしたように小さく息を吐き、ティーカップに口をつけた。