「ん…あんた、誰ッスか?」
白銀の髪を一つにまとめ、平安貴族か陰陽師の服を纏い…そして顔を白い布で覆った者。
その隣には、これまた平安の姫を思わせる服に身を包む女性が微笑んでいる。
(敵意は無さそうだけど、顔を隠している方の気配、どっかで……)
ゲドウ神ほどではないにしろ、多少は気配を感じ取る力があるリピート神は覚えのある気配に眉を顰めた。
若干警戒していることが知れたのか、顔を隠している方…声からして、女性の声のようにも聞こえるが恐らく青年だろう。
青年は柔らかな声音で告げた。
「突然声を掛けてすまない。彼女が一言、伝えたいことがあるそうなんだ」
「………。いいッスよ、聞きましょう」
はぁ、と小さく溜め息を吐くと、リピート神は肩を竦める。
そんな彼の様子を見て、ふふ、と笑うと女性は軽く頭を下げてから口を開いた。
「あなた方は、ゲドウ神様のお知り合い、ですね?彼女に"この間は相談にのっていただき、ありがとうございました。問題は解決し、私はいま幸せに彼と生きております"とお伝えいただければと…」
「先輩に?分かりました、ちゃんと伝えておきます」
「ありがとう、宜しく御願いします」
リピート神の手を取って微笑むと、女性は青年の後ろに下がる。
「僕からも一つ。…といっても、言葉は不要なんだけど」
くすりと笑う素振りを見せたあと、青年は日暮の前にしゃがんで一輪の青い薔薇を差し出した。
「これを、可愛い人の子に。特別な薔薇なんだ、どうか受け取って」
「え、っと…」
見ず知らずの人から受け取っていいものかわからずにリピート神を見上げると「大丈夫ッスよ」と返ってきた。
「…ありがとう、ございます…大切にします…」
「うん。此方こそ、受け取ってくれてありがとう」
***
翌日。
深夜、夜明、真昼の三人が仕事に出ている時間、ゲドウ神は日暮の部屋で昨夜の話を日暮、リピート神の二人から聞いていた。
伝言を頼んできた女性と青年のこともリピート神が話すと「おや、やっとあの二人一緒にいられるようになったんですねぇ」と紅茶を啜る。
「先輩、あの女の人一体誰なんスか?」
「ん?嗚呼、彼女は織姫ですよ」
「おりひめ、さま…?」
「えぇ。昔、彼女に家の事や彦星とのことについて相談されましてねぇ。まぁ、なんとかうまくいったようで良かった」
「え、じゃああの男の方ってもしかして彦星ッスか?」
ゲドウ神は思案するように口を閉じるが直ぐに「彦星の方には会ったことがないけれど、恐らくそうでしょうね」と頷いた。
「すごい、私たち織姫様と…彦星様に会ったんだ…」
「うわ…そう考えたらなんか妙な感動が…」
織姫と青年の話で盛り上がっている二人の隣で話を聞きながら、ゲドウ神は花瓶に生けられている青薔薇を見やった。
(……伝えたいことがあるなら、会いに来れば良いのに。相変わらずよくわかりませんね、貴方は)
どこか呆れたように一人苦笑すると、青薔薇の意味を考えるのは一旦やめ、彼女はティーカップの中の紅茶を飲み干した。