「神様、僕乗っても大丈夫だったのかな…」

 

家を出る前、ゲドウ神に「人間であると周りの者に気付かれないようにだけ、気を付けてくださいね」と言われたのを思い出した日暮は、先程から異形の者や神聖な者の視線を感じ、正面に座って窓の外の景色を眺めているリピート神を不安げに見た。

 

リピート神は周りを見回すと、小さく笑って日暮の頭を撫でる。

 

「大丈夫ッスよ。あの人たちは多分、日暮ちゃんを天使だと思ってるだけだから」

 

「天使…?」

 

「はい、天使って白髪とか銀髪とか、色素が薄い種族なんスよ」

 

「そう、なんだ……」

 

人間だと知られていないことがわかり、ほっと息を吐いて安心する日暮からまた視線を窓の向こうへと移したリピート神は、内心で呟いた。

 

(……これは、人間だってバレてるッスねぇ)

 

日暮は天使に見られてもおかしくはない容姿をしているが、気配は神聖なものに近い"人間"だ。

 

この車内にいる者たちをちらりと見る限り…皆、気配を正確に感じ取れるくらいには力が強いようで。

 

しかし、彼等が騒がないのは。

 

『あれが、神の祖の祝福を受けた一人か』

 

『隣の娘は、あのゲドウ神様の加護下にあるようだ…彼女の気配を微かに感じる』

 

『……ああしていると、兄妹のようで微笑ましい限りですわね』

 

『ふふ、本当に…声を掛けて驚かせては悪いし、静かに見守っているとしましょう』

 

皆、ゲドウ神をよく知っているからのようだ。

 

(神の祖だかなんだかって神様の祝福を受けた神って、周りからの風当たりきついことが多いんスけどね。ここにいる人たちは良い人そうで助かったな)

 

日暮が光輝く星の海に目を奪われている隙に、こちらを見守ってくれている者たちに小さく笑いかけた。

 

それから、三時間ほど経ち……

 

『次は、××駅…××駅…』

 

車内アナウンスが流れ、リピート神は

 

「ここで降りるッスよ、日暮ちゃん」

 

少しがっかりするかな、と思いつつも飽きることなく夜の星空を眺めている日暮に声を掛けると、彼の予想に反して

 

「そう…楽しかった、ね。帰ったら…ゲドウの神様や兄さんに、御話してあげようね……」

 

彼女はこくりと頷き、笑った。

 

「そうッスね」

 

日暮の手を引いて出口まで歩いていく。

 

と、出口前に立つ人物の一人が「あの、少しいいかな?」と声を掛けてきた。