銀河鉄道。

 

文豪、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる列車として有名だが、実は彼が作品に出すよりもずっと昔から天上界と人間界とを結ぶ鉄道として天上や異形の者たちの間で知られている。

 

しかし、車掌の正体や終点は一体どこなのか、乗車に必要なチケットはどこで入手できるのかなどはごく一部の者にしか知れていないため、別名"幻想列車"と呼ばれていた。

 

そんな、謎の多い銀河鉄道の乗車チケットを二枚持って霧谷家の廊下を歩く女が一人……。

 

「あ、先輩おかえりなさいッス!…ん、それは?」

 

紅茶神、サカダチ神との御茶会を終えて帰宅したゲドウ神を出迎えると、彼女の手にあるものにリピート神は緩く首を傾げた。

 

「ただいま。ふふ、乗車チケットですよ、銀河鉄道の」

 

「へぇ、銀河鉄道の……って、んんん!?え、先輩、それってあの銀河鉄道ッスか!?」

 

「えぇ、あの銀河鉄道です。今夜22時にちょうどこの家の上空付近に止まるので、日暮と二人で乗ってきなさい」

 

「マジか…!先輩すごいッス…ありがとうございます!」

 

子どものようにきらきらと目を輝かせてはしゃぐリピート神。

 

彼がここまで喜ぶのには理由があった。

 

 

***

 

 

今朝、リピート神が面倒をよく見ている霧谷家の末っ子、日暮とこんな会話をしていた。

 

「日暮ちゃん、何書いてるんスか?」

 

「これ…?ん、と…今日、七夕だから…お願い事書いてる…」

 

「嗚呼、彦星と織姫が一年に一度会える日ッスよね。そうか、もうそんな時期なんスね。因みに、日暮ちゃんのお願いは何かな?」

 

「……銀河鉄道に、乗れますように。乗れたらきっと、楽しいと思うから…」

 

「嗚呼、宮沢賢治のッスか?あれ、俺も乗ってみたいんスよね。一応実在はするらしいけど、詳しくはわからなくて」

 

「じゃあ、リピートの神様も、短冊書こ…」

 

「お、いいッスね!書こう書こう」

 

 

***

 

 

日本に来た時、日本語の勉強をするために様々な本を読んだリピート神。

 

彼が興味を引かれたものの一つが、宮沢賢治の作品に出てくる銀河鉄道だった。

 

日暮とリピート神のやり取りを知っていたゲドウ神はどこからか情報とチケットを入手し、こうして今回二人の願いを叶えた、というわけだ。

 

因みに、深夜、夜明、真昼の願いも既に彼女が叶えているが、それはまた別の御話。

 

そんなわけで……22時前。

 

リピート神は日暮を横抱きにし、銀河鉄道が止めるポイントへと向かった。