むかしむかし。

 

病弱なヴァンパイアの娘と、異形の者について研究していた紳士が街中で運命的な出会いをし、恋に落ちました。

 

愛する人との子どもがほしいと願った娘、しかし人間と交わり産まれる子どもは身体のどこかしらに異常を抱えている可能性が高かった。

 

それでも、自分たちの子供ならば愛せるという紳士の言葉に、娘も同意しました。

 

数年後、二人の間にはヴァンパイアと人間のハーフが産まれました。

 

ヴァンパイアの特徴である赤薔薇を映したような瞳。

 

父親の国の特徴であるシルバーの髪。

 

とても美しい、お姫様です。

 

お姫様は一族のヴァンパイアたちと両親の愛を一心に受け、優しく、気高い女騎士へと成長しました。

 

そんな彼女にずっと憧れていた一人の女の子がいました。

 

お姫様は毎日忙しく、女の子は話しかけられずに見ていることしか出来ませんでしたが、あるときお姫様が女の子の家に御茶会の招待状を送ってくれたのです。

 

女の子は口から心臓が飛び出しそうになりながら、精一杯おめかしをして、お姫様の御屋敷へ行きました。

 

お姫様はこの世界のことや紅茶のこと、お菓子の作り方などいろいろなことを話してくれました。

 

素敵なお姫様、きっと私たち一族を引っ張っていく立派なご当主になられることでしょう。

 

女の子はそう信じて疑いませんでした。

 

しかし、数ヵ月後。

 

お姫様は魔女裁判にかけられ、業火に焼かれてしまいました。

 

一族の誰もがお姫様は死んでしまったと深く悲しみましたが、お姫様が炎の中で目を閉じる瞬間、女の子は確かに見たのです。

 

青い薔薇を一輪、お姫様に差し出して微笑みかける“神様”と。

 

何かを呟いて笑う、お姫様を。

 

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『おひめさま、どうなったの…?』

 

良い結末を予感した三人の幼い瞳が、本のページを閉じて微笑む女性を見上げる。

 

『お姫様は神様に救われたんだよ』

 

『それじゃあ、おひめさまはしあわせになったのか?』

 

『さぁ、それは我にはわからない。幸せかどうかを決めるのはお姫様自身であって、物語を書いた我ではないのだよ』

 

微笑みを浮かべたまま、一番上の孫の頭を撫でると

 

『いつかまた、お姫様にお会いしたいものだ』

 

記憶の中の彼女を見るように、遠い目をして呟いた。