■一章
18世紀、ノルウェー。
少年は、物心ついたときから村の大人たちに混じって、朝から夕方まで畑を耕していた。
それが、農家の息子として生を受けた彼――クラウスの仕事だ。
クラウスは子供ながらにそれを理解していたし、決して裕福ではない家の家計を少しでも支えたいと思っている。
だから不満は一度も漏らしたことがない。
それどころか、毎日楽しそうにクワを振り上げ、手が空いたときは家畜の世話をしていた。
今日の仕事が終わると、クラウスは真っ直ぐ家には帰らず、親友の家へ駆けて行った。
親友のテーオドルは生まれつき身体が弱く、クラウスのように仕事は出来ない。
そのため、村の皆が外で働いている時間はずっと家で本を読んだり、絵を描いたりして時間を過ごしている。
「テオ、今日の仕事は終わった!一緒に散歩しないか?」
テーオドルの家に着くと、部屋の中にいるであろう彼に聞こえるよう、クラウスは声を張り上げて呼んだ。
暫くして、出入り口の扉が開かれる。
「クラウス、今日もお勤めご苦労様」
テーオドルは土で顔や服が汚れている親友に労いの言葉を掛けると、「調子がいいから、昨日よりも少し遠くまで散歩したいな」と笑った。
「だったら、俺の家まで行かないか?それで、久し振りに夕食を一緒に食べよう」
「いいね。でも急に行ったら迷惑になるんじゃ…」
「大丈夫だ、きっと父さんも母さんも喜ぶさ」
それならいいかな、とテーオドルは頷くと、台所にいる母親に「クラウスの家で夕食をいただいてくる」と告げて家を出た。