霧谷家、日暮の部屋。
「…みーつけた」
一緒に紅茶でも飲もうとゲドウ神を探していたリピート神は、ベットの上で寝息を立てている彼女を見つけると囁くように呟いた。
今、この家にいるのは彼女とリピート神だけ。
彼を心から信頼しているのだろう、彼女が目を覚ます気配は全くない。
リピート神はベットの端に腰掛けると、愛する先輩の寝顔を眺めた。
(はぁ、癒されるッスね…起きてるときも眠ってるときもほんと天使…この人最強かよ)
そんなことを考えながら一人デレデレしていると
「うわっ…!」
腕を引っ張られ、咄嗟に目を閉じる。
「……?…ふぁっ!?」
そっと目を開けると、ぐっすり眠っていたはずのゲドウ神が自分を真上から見下ろし、彼女に押し倒されている体勢になっていた。
(おおお落ち着け俺これは何かの間違いというかそう!事故であって先輩が寝たふりして俺を油断させ押し倒したとかそんなわけ…!)
突然のことに頭がついていかず混乱するリピート神に「やぁ、おはよう」と微笑みかけると、ゲドウ神は昨日から気になっていたことを訊ねた。
「君に訊きたいことがある。冷蔵庫に入れていたプリンを食べたのは、君ですか?」
「プ、プリン?」
「そう、プリン」
彼女の口から出た予想外の言葉に若干冷静になったリピート神は、そういえば昨日どこかで見たような、とプリンの行方を思い出そうと考える。
「いや、俺じゃないッスね。確か…真昼ちゃんが食べてたような…?」
「……。真昼なら、仕方ないですね」
納得したように呟くと、リピート神の上に覆いかぶさるようにうつ伏せで寝転がり
「私が起きるまで、動かないでくださいね。おやすみ」
ゲドウ神は目を閉じて再び眠ってしまった。
「えええ!?ちょ、先輩待ってください、俺の心臓持たないッスよこれは!ねぇ先輩?聞いてます?……駄目だ寝てる」
「…ったく、信頼してくれてるのは凄く嬉しいんですけど。俺だって大人の男なんスから、ちょっとは意識してくださいよ…」
間近にあるゲドウ神の寝顔に心臓がうるさく高鳴っているのを感じながら胸の内で呟くと。
(……そういえば、今日ってキスの日じゃなかったっけ?)
ふと、前回の神々の御茶会で嬉々として“キスの日”のことをユカ神が語っていたのを思い出した。
「………」
首を僅かに動かして彼女の腕に、次に首筋にそっと口付けて囁いた。
「おやすみなさい、先輩」
リピート神が寝息を立て始めて数分後のこと。
「………」
幸せそうに眠る“後輩”の寝顔を眺めながら、ゲドウ神は口付けられた箇所に未だ残る熱の意味を考えた。
けれども、 いくら考えたところで今の彼女にはわからなかった。
否、わからないフリをしているのかもしれない。
「おやすみ、エドワード」
微笑んで、彼女はもう一度目を閉じた。
キスの意味。
腕:恋慕/首筋:執着