慧が街をぶらついていたときのこと。

 

前方からガラの悪い男たちに挟まれて歩いてくる青年の姿を視界に捉え

 

「はぁ…仕方ねぇ奴だな」

 

深く溜め息を吐いて、男たちに近付いた。

 

「いやー、深夜くんには感謝だは」

 

「ふふ、どうも」

 

「おい、アンタたち俺のダチに何してんだ」

 

男たちを睨んでそう声を掛けると、深夜と男たちは不思議そうに首を傾げる。

 

だが直ぐに状況を理解した深夜は

 

「慧くん、何か勘違いしてます。この方たちは居酒屋を探していらっしゃっただけで、僕に何かをしようとは考えていませんよ」

 

クスリと笑った。

 

「は…?マジで?」

 

「おー、マジマジ!なんだ兄ちゃん、俺たちが深夜くんに乱暴してると思って助けに来たのか?」

 

「ははは、いいダチを持ったなぁ、深夜くん」

 

「でしょう?皆さんも素敵な友人の一人ですけどね」

 

愛想笑いを浮かべてそう言うと、男たちは深夜の肩を叩いて豪快に笑った。

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇの。気に入った!今度二人にうまいもん奢ってやる!」

 

「おや、ありがとうございます」

 

「んじゃ、俺たちそろそろ行くは。またな!」

 

男たちの背を見送ると、慧は若干疲れたように隣でにこにこしている幼馴染に訊いた。

 

「なんで御前って、昔からああいうやばそうな奴とも直ぐ仲良くなるんだよ…ひやっとしたじゃねぇか」

 

深夜は腕を組んで首を傾げる。

 

「んー、なんか普通に話していたら皆、仲良くなっちゃうんですよねぇ。どうしてでしょう?」

 

「知るか、この人誑しめ…」

 

(…まぁ、その人誑しに俺も誑し込まれてるんだけどな)

 

内心でそう呟き苦笑しながら「飯、食いに行くぞ」と深夜に声を掛け、馴染みの店の方向へと足を向けた。

 

「慧くん」

 

「あ?」

 

何かを考えるように一拍間を空けると、穏やかに微笑んで深夜は親友に告げた。

 

「一番の友人は、君ですからね」

 

「……ッ、不意打ちとかほんとふざけんなよ」

 

あまり本心を口にしない友人からの言葉に思わず顔を赤くして顔を両手で覆い隠す慧。

 

そんな彼を眺め、愉快そうに笑う深夜の声は街の喧騒に掻き消された。