深夜の幼馴染、加藤 慧は四兄妹と仲が良い。
霧谷家の家庭事情をよく知っているからか、高校を卒業してからは時々霧谷家に来て夕食を作っていく。
その日を四兄妹は“慧くんDay”と呼んでいる。
慧は食材が沢山入っている買い物袋を片手に持ち、インターホンを押した。
-真昼と慧くん-
インターホンを押して暫く待っていると、玄関の扉がゆっくりと開く。
中から顔を覗かせたのは真昼だった。
「やっほー慧たん☆相変わらず超イケメンだね~」
「よう、真昼たん。御前は相変わらず可愛くていい女だな」
「きゃはは、御世辞でも超うれし~」
「さ、上がって上がって~」と御機嫌で家の中に入っていく真昼を見てクスリと笑いながら扉を閉めると、キッチンへと向かった。
-夜明と慧くん-
キッチンで着くと、慧は持っていた買い物袋を棚の上に置いて冷蔵庫を物色し始める。
そこに丁度、夜明が水を飲みに来た。
「ん、来ていたのか。いらっしゃい」
「おー、夜明か。御前、髪伸ばすと深夜そっくりだな」
「そ、そうか…!?」
「おう。つか、相変わらず兄貴のこと大好きなんだな。御前等喧嘩とかしねぇの?」
大好きなんだな、と言われ少し照れたように頬を赤らめて視線を逸らす夜明だったが、次の言葉には首を横に振って真顔で否定した。
「ないな。万が一そんなことになったら、次の日紅茶の雨が降ってくる」
「は、マジかよ」
思わず慧も真顔になった。
-日暮と慧くん-
夕食の準備が一通り出来ると、部屋でゲームでもしているであろう霧谷家の末っ子を呼びに行った。
「おーい、いるか?」
日暮の部屋の扉をノックすると、中から日暮がひょっこりと顔を出す。
「慧くん、来てたの…こんばんは…」
「よう、飯出来たぞ。御前の好きなオムライスとコーンスープな」
「わーい…!」
ほんの少しだけ嬉しそうな表情で喜ぶ日暮の頭をわしゃわしゃと撫でながら、背中に隠していたものを彼女に渡した。
「あと、良い子の日暮にはこれをやろう」
「……!」
それは、日暮が最近ハマッているゲームに出てくるイカのぬいぐるみだった。
目を輝かせてぬいぐるみを受け取る日暮に「早く来いよ、冷めるぞ」と言い残して、他の三人を呼びに行った。
-深夜と慧くん-
夕食を食べ終え、リビングのソファーに座って優雅に紅茶を飲んでいる深夜の隣で慧がテレビを観て寛いでいると。
「慧くん慧くん、何か面白いことないですかねぇ」
「んー…ねぇな」
幼馴染の問いかけに少し考えてみるも、特に何も思い浮かばずそう返した。
「えー、何かないんですか?」
「あのな、常に俺が面白いネタ持ってると思うなよ?」
「慧くんは面白ネタの宝庫では?」
「待て、いつからそんな認識だったんだ?ん?」
にこりと笑って首を傾げる深夜の肩をがしりと掴んで、真顔で訊ねた。
午後九時。
四兄妹に見送られて、慧は霧谷家を後にした。