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モバイル版で閲覧してくださっている読者様へ。
今回はショートストーリーではなく短編小説なので、もしかしたら一ページの文章量が多くてスクロールしても続きが読めないページがあるかもしれません
一応そういうことがないよう、文章量を考えながら打っていますが、もしダメだったときはPCからログインして閲覧してください
また、本作は暴力的表現を含む箇所があります
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■序章
ある日の朝。
「行ってらっしゃい」
霧谷家長男――深夜は、電車で約一時間の場所にあるコミックマーケット、通称コミケ会場まで出掛ける弟妹たちを玄関口で見送ると、自室のベットに倒れ込んだ。
「…怠い…風邪でも引いたんですかねぇ」
起きたときから体の不調に気付いていたものの、夜明たちに心配は掛けないよう普段通りに振る舞っていた。
誰もいない家に、咳き込む音が響く。
「…ケホッ…何としても、皆が帰ってくるまでには治さないと」
気怠げに布団の中に潜り込むと、深夜は静かに目を閉じる。
数分後、深い微睡みの海に沈んでいった。
熱が出ているのだろうか。
苦しそうに呼吸をしながら眠っている青年の様子を、傍で眺めている女がいた。
時折魘されている青年の頭を撫でてやりながら、女は彼を初めて見掛けた日のことを思い返し、懐かしさに目を細める。
女はぽつりと呟いた。
「ゆっくりお休み。ずっと御前の傍にいますからね」
***
コミケ会場の近くまで来た夜明、真昼、日暮の三人は人の群れに流されそうになりながら会場を目指し歩いていた。
「んん…」
「おわっ」
「おっと、大丈夫か?」
夜明は転びそうになった妹たちの腕を掴むと、「会場に着く前に迷子になっても困るし、しっかり握ってろよ」とそのまま二人の手を引いた。
「夜明たんやっさし~」
「流石、兄さん…イケメン…」
「はいはい、Thanks」
妹たちの手を引いて行きながら、ふと今朝の兄の様子を思い出し心配になって「兄さん、大丈夫だろうか…」と呟いた。
「ちょっと体調悪そうだったよね。兄妹なんだから気を遣わなくてもいいのに~…深夜たんって、小さい頃からずっとあんな感じなのぉ?」
真昼は首を傾げ、夜明の横顔を見上げる。
深夜、夜明の兄組と、真昼、日暮の妹組は実の兄妹ではない。
兄組の父親と、妹組の母親は仕事の関係で知り合い、五年前に再婚した。
そのため、深夜の子供時代を知るのは夜明だけだった。
彼は学生時代の兄の姿を思い浮かべると、ただ静かに一度頷く。
「そっかぁ…」
何とも言えない表情をしている姉の顔をチラリと見ると、先程からずっと黙って聞いていた日暮は独り言のように言った。
「兄さんなら、大丈夫…ずっと…“神様”がついてる、から…」
その声は、周りの声と足音によって搔き消され、二人の耳には届いていなかった。