「霧谷さん、ロゼ御嬢様がお呼びですよ」

 

綾斗は事務室で作業をしていた深夜に声を掛けると、首を傾げた。

 

「そういえば、オフ会をしていらっしゃる御嬢様方とロゼ御嬢様はお知り合いのようでしたが、あれは何のオフ会なんでしょうね?」

 

「嗚呼…今若い御主人様や御嬢様の間で流行っているチャットサイトのオフ会ですよ。まだあの方々には明かしていませんが、私もそのチャットサイトのメンバーの一人なんですよねぇ」

 

「へぇ、霧谷さんチャットなさるんですか。ちょっと意外ですね。俺と妹はSNS系は疎くて…」

 

少し恥ずかしそうに笑う綾斗をちらりと見ると立ち上がり

 

「興味があるなら今度お教えしますよ。さてと、ちょっと行ってきますね」

 

ネクタイを締め直し、オフ会中の客たちの元へと向かった。

 

 

***

 

 

「お待たせして申し訳御座いません、ロゼ御嬢様。…っと、初めましての御嬢様、御主人様がいらっしゃいますね。執事長の霧谷と申します、宜しく御願い致します」

 

挨拶をし頭を下げた瞬間。

 

「本物だ…本物の深夜さんがいるよ水猫さん…!」

 

「わぁ、生深夜さん!初めまして~!」

 

二人の御嬢様は感激したように言いながら目を輝かせた。

 

どうやらロゼが彼女たちに霧谷が実の兄だと言ったようだ、深夜と目が合うとにこりと笑った。

 

「あ、あの…ししし深夜さん、いつも妹さんにはお世話にな、なってまふっ…」

 

「いっちー落ち着いて!噛んでる!噛んでるよ!」

 

いっちーと村瀬に呼ばれた青年は舌を噛んでしまい、痛みに悶える。

 

因みにいっちーはロゼこと日暮の“ネット上”のフィアンセということになっているため、ロゼの兄である深夜を目の前にし、緊張でいま上手く話せない状態だ。

 

「ふふ、此方こそ妹がお世話になっております。これからも仲良くしてあげてくださいね、いっちー様」

 

彼の緊張を解すように微笑むと、「は、はい!それはもう、全力で仲良くします…!」という返事が返ってきて深夜は安堵した。

 

三人の反応を楽しんだロゼは深夜を呼んだ用件を告げる。

 

「深夜御兄様、四人とも普段あまり紅茶を飲まないみたいだから、美味しい紅茶を淹れてくださらないかしら?あと適当に、紅茶に合うお菓子もお願い」

 

「畏まりました。準備して参りますので、少々お待ちくださいませ」

 

御辞儀をして一旦下がると、四人は深夜の背を見送りながら囁いた。

 

「執事長が執事長で辛い…ロゼ様想像通りで美しいし尊い…はぁ、幸せ。私もうここの常連客になるは」

 

「いいですね~、私も常連さんになりたいです!」

 

「お、俺も…嗚呼でも俺コミュ障だから一人で来るのは無理…」

 

「あら、それじゃあ私と一緒に帰宅する?でもそれってデートみたいよね」

 

「デデデ、デート…!?」

 

(ふふ、あのチャットルームで話してるみたいな会話ですねぇ)

 

四人の会話に深夜は頬が緩むのを感じながら、厨房へと入っていくのだった。