-クズ神、カス神的前回のあらすじ-

 

クズ神:リピート神のライバルが出現したっぽい。

カス神:ぽいじゃなくて、出現したんだよ。

 

 

 

 

「で、用件は何ですか?」

 

紅茶神と姉弟が住んでいるマンションの一室に場所を移し、紅茶神が淹れた紅茶を飲むとやっと機嫌を直したらしいゲドウ神は戦神に訊ねた。

 

「実は先日、装飾銃を手に入れてな。だが俺には剣があるし、良かったら護身用にでも貰ってくれないか」

 

懐から一丁の銃を抜くと、テーブルの上にそっと置く。

 

ゲドウ神はそれを手に取って眺めた後「良い銃ですね。仕方がないので貰って差し上げます」と懐に仕舞った。

 

「ねぇねぇ、さっきパパ…ゲドウ神が、昔はお兄さんと仲悪かったって言ってたけど本当なの?」

 

紅茶神の膝の上でショートケーキを頬張りながら訊ねてきたクズ神を、戦神はちらり見ると…こくりと頷き、当時のことを語り始めた。

 

「あれは、数百年前…ゲドウ神が天上界にいたときのことだ」

 

 

***

 

 

約四百年前、天上界。

 

朝、戦神は武器屋に赴く用があり、目的の店がある街を歩いていると前方から見慣れた女性が此方に向かって歩いてくるのが視界に入り思わず舌打ちした。

 

最近、世界の全てを創造したと言われている“神の祖”によって、人間の魂から神に転生した女神が天上界に住み始めたという噂があちこちで囁かれている。

 

天上界の歴史上、人間が神になった事例はなく…その女神はたった一人「祖の祝福を受けた神」として、天上界の位の中で最も高い、最高位を授けられているという。

 

それが、前方から歩いてくる女性――ゲドウ神だった。

 

数々の武勇で名を馳せ、天上界での高い地位を自分の力で勝ち取った戦神からしてみれば、元人間の小娘がいきなり最高位を授けられたなど実に面白くない。

 

「…朝から嫌な女に出会ってしまったな」

 

ゲドウ神が自分の横を通り過ぎようとした瞬間、わざとらしくそう吐き捨てる。

 

すると彼女は立ち止まって振り返り「おや、朝から胸糞悪い方に出会ってしまいましたねぇ」と笑顔で返してきた。

 

戦神も立ち止まり、続ける。

 

「最高位だかなんだか知らないが、あまり天上界をうろつくな。貴様のような元人間の小娘がいると、神聖な天上界が穢れてしまうは」

 

すると、ゲドウ神は一瞬で戦神の懐に入り…腰の剣を鞘から少し抜いて冷ややかな声音で囁いた。

 

「……気に食わないなら、武人らしく剣を取れ。貴殿は他者を蔑んだその口で、戦神を名乗るのですか?だとしたら戦神失格ですね」

 

「っ……」

 

(悔しいが、彼女の言っていることは正論だ…)

 

これまでの彼女に対する態度は、誇り高き武人としてどれもこれも正しくないものだったと思うと何も言い返せなくなり、黙り込んでしまう。

 

そんな戦神を暫し眺めた後、ゲドウ神は

 

「私も元とはいえ武人のようなもの。同じ武人としては、貴殿を尊敬しているんです。だからあまり失望させないでくださいね」

 

ひらひらと手を振って立ち去った。

 

 

***

 

 

(あの一言で、今度は別の意味で彼女のことが気になりだしたんだったな…)

 

「へぇ、それから戦神ちゃんとゲドウちゃんは仲良くなっていったの?」

 

ふう、と紅茶を一口飲んで息を吐く戦神を先程からちらちら見ているリピート神を眺め、クスリと笑いながら紅茶神は訊ねた。

 

「あー…そう、だな?」

 

何とも歯切れの悪い返事をしながら戦神はゲドウ神を見る。

 

彼の視線に気付いたゲドウ神はソーサーの上にティーカップをそっと置き、その後どうなったんだったかと数百年前のことを振り返った。