ゲドウ神とクズ神、カス神が空中散歩をしていたときのこと。
「……ものすごく面倒くさい方の気配が近付いている」
「だれだれ?」
「ユカ神?それともリピート神?」
きょろきょろと辺りを見回す姉弟に「あの二人は別に面倒ではありませんよ」と笑うと、二人は声を揃えて「「そうなの?」」と首を傾げた。
と、そのとき。
「ゲドウ神…!」
三人の頭上から男の声が響いた。
名前を呼ばれたゲドウ神は声だけで分かったのか、逃走しようと二人の手を取る。
それに気付いた男は素早く彼女に近付き、肩を掴んだ。
「待て、何故逃げようとする」
くるりと男の方を向かされ問いかけられると、ゲドウ神は「気分です」と目を逸らす。
「ねぇゲドウパパ。その人誰?」
クズ神はじっと男を見上げながら訊ねた。
この姉弟は時々ゲドウ神を“パパ”“御父様”と呼ぶことがあるが、特に意味などない。
彼女に限らず、誰に対してもその時の気分で呼び方は変わるのだった。
そんな姉弟に
「戦神ですよ。天上界に住んでいたころ、顔を合わせるたびに喧嘩していた人です。所謂、犬猿の仲というやつですね」
そうゲドウ神が答えると、戦神は何とも言えない表情を浮かべる。
「そ、それは昔の話で…!今はそこそこ仲が良い、と…思うんだが…」
「凄く自信無さげだね、お兄さん」
ケラケラ笑うカス神を横目に戦神がゲドウ神の肩から手を離したのとほぼ同時に
「せんぱーい、こんなところで何してるんスか?」
偶然通り掛かったリピート神の声が響き、彼はゲドウ神の横まで飛んでくると、知らない男の姿が視界に入って首を傾げた。
「先輩、その人誰ッスか?お友達とか?」
「私のことが嫌いであろう戦神です」
「待て。やっぱり御前、あの時俺が不味い紅茶を淹れて出したことを怒っているな…?」
「さぁ、何のことでしょうねぇ?」
「本当にすまなかった。俺は御前のこと、友人として…その、好ましく思ってる…だからどうか、あれはわざとではなかったと分かってほしい」
「なら今すぐ淹れ直せ」
笑顔だが決して目は笑っていないゲドウ神に見下ろされている戦神のことが、リピート神はちょっとだけ羨ましく思いつつ「好ましく思っている」の部分に引っ掛かりを覚えた。
それに気付いてなのか…ゲドウ神と戦神の様子をリピート神の後ろで傍観していた姉弟は
「あれ、絶対パパのこと好きだよね」
「じゃなきゃあんなに必死に謝ったりしないし。きっと永い間片思い拗らせてるんだろうな」
リピート神を見上げて、クスクス笑った。
(嗚呼、成る程ッス)
引っ掛かりの正体がわかると、リピート神は誰にともなく呟いた。
「OK,彼奴は俺の敵だ」