ある日の午後。
「兄さん、紅葉(コウヨウ)を見に行こう」
王国の北に建つ城の一室、熱心に何かを書いているルトの首元に抱き着いたルカは目を輝かせて言った。
突然抱き着かれたルトは驚いた顔をするもすぐに微笑んで「紅葉?」と首を傾げる。
「うん、バラさんがそろそろ紅葉のシーズンだから、紅葉狩りしてきたらどうだって」
バラさん、というのはルカが毎日手入れしている城の庭、その一角に咲く薔薇の精のことだ。
「紅葉狩りか…いいね、今から行こうか」
「本当?やった!」
自分の提案が通り、ルカはご機嫌で「先に行ってるね」と部屋を出て行った。
***
鮮やかに色付いた山の中。
黄色の葉を拾い、ルカはにこにこ笑いながらルトに話しかけた。
「兄さん、凄く綺麗だね」
「そうだね、たまにはこういうのも悪くない」
普段からあまり山には入らないため、紅葉狩りの機会が今までなかったルトだったが、いざ来てみると森とは違った景色が広がっていて凄い、と感動した。
「あ、兄さんじっとして…」
何かに気付いたルカはルトの髪に手を伸ばすと、一枚の赤い葉を摘み上げる。
「紅葉(モミジ)、ついてたよ」
「ありがとう」
弟の頭を撫でてやると、葉の絨毯の上に寝転がって空を見上げた。
「今日も、平和だね」
「明日も平和だといいね、兄さん」
「そうだね」
囁くように、幸福の双子は呟いた。