それは、彼女の一言から全ては始まった。




…壁ドン、て…どうしてやるの…

ある昼下がりのこと。

霧谷家の末っ子、日暮は少女漫画に度々出てくる“壁ドン”の意味について、兄の一人である夜明に訊ねた。

壁ドン?相手を壁まで追い詰めて恐喝、或いは告白するあれのことか?

兄さん…それ、違わないけど…違う

…で、その壁ドンが何だって?

ん…巷で人気みたい、だけどね…正直、壁ドンの良さが分からない…やる意味ない、でしょ…

すると夜明は頷き

嗚呼、俺も良さはいまいち分からない

日暮に同意した。

そんな二人の会話を、洗濯物を畳みながらずっと聞いていた深夜と真昼は顔を見合わせ

だったら、壁ドンする側、される側を体験してみては?

そうそう。そしたら良さが分かるかもよ~?

何か悪戯を企んでいるような笑みを浮かべて提案する。





こうして、第一回霧谷家壁ドン選手権が開催されることになった。

 



***

 

 


ではこのクジを引いてください

割り箸を四本握って、深夜は弟妹達に差し出す。

四本のうち、二本赤色を塗っています

それを引いた人はする側かされる側かも書いているので、確認してからやってくださいね

深夜の説明に三人は頷くと、四人同時に割り箸を引いた。

あ、あたし赤!ドンする側だ~

…俺も赤だ。される側、か

 

 

 

 

 

①真昼×夜明


それでは、張り切ってどうぞ

…深夜兄さん、ノリノリ…どうぞ…

楽しそうな長男を横目に、正面で先程からによによしている真昼に「俺は立ってればいいんだな」と訊ねた。

うんうん、夜明たんは立ってるだけでいいよぉ

………

すると突然ドン、と壁に手をつき、真昼は夜明を見上げた。

夜明兄さんさぁ、鈍過ぎだよ。そろそろあたしの気持ちに気付いても良いんじゃない?

は…?ど、どうした真昼

普段の口調や雰囲気と少し違うことに戸惑いを隠せない夜明。

一方真昼は真剣な表情で続ける。

どうした、じゃないよぉ…まぁ、鈍いとこも可愛くて好きだけどね~

え、…んん?

………。きゃはっ、夜明たん戸惑いすぎだよ~

面白いものが見られて御兄様は満足です

僕も、満足…