「ねぇ、ルカ。これ、庭に植えてみない?」
森で気儘にヴァイオリンを弾いていると、いつの間にいたのか、兄のルトが何かの苗木を両手に抱えてルカのすぐ傍に立っていた。
「兄さん!んと、それは?」
「柘榴という果実の苗木だそうだよ。空想上の果実とされているらしく、箱庭にはこの苗木しか柘榴はどうやらないらしい。バラさんが今朝教えてくれたんだ」
ルカは柘榴に興味を持ったのか、目を輝かせて柘榴の苗木を見つめると「今から植えに行こうよ」とその場でぴょんぴょん跳ねた。
そんな弟を「可愛いなぁ」と思いながら頷き、ルトは城へと足を向け歩き出した。
***
「いいんじゃない?」
城の庭に苗木を植え終えると、ずっと双子の作業を見守っていたバラさんこと薔薇の精はにこりと笑った。
「兄さん兄さん、柘榴の実はいつ食べられるの?」
「んー…いつだろうね。文献にない植物だから、僕にもわからないな」
「そっか…。楽しみだね!」
楽しそうに木を眺めている弟に「そうだね」と微笑み、ルトは苗木の枝をそっと撫でた。
大きく育つようにと、祈りながら。