ある日のこと。
深夜と夜明は、二人で留守番をしていた。
「うーん…」
背中に張り付いて離れようとしない弟に何と声を掛けたものかと考えつつ、深夜は数時間前からPCを使って小説を書いていた。
ふと、画面の右下に小さく表示された時間に視線をやると、午後四時を過ぎている。
「夜明。夕食、何か食べたいものありますか?」
兄に問われ、夜明は少し考える素振りを見せると
「……。薔薇屋敷特別メニュー~執事長の愛情を添えて~」
とだけ答えた。
薔薇屋敷、というのは深夜が働いている使用人喫茶の名前。
喫茶店とはいえ従業員にはそれぞれ役職があり、深夜は現在執事長を務めている。
夜明が今リクエストしたのは、シェフではなく、深夜自らが調理をしお客様に提供しているコース料理である。
「お店のメニュー、よく知ってますねぇ」
「ネットで調べました」
「…客ばっかりずるい。俺も兄さんの愛情メニュー食いたいです」
少し拗ねたように言う弟を見て、内心でふふ、と笑う。
(兄弟はいくつになっても可愛いものですねぇ)
「分かりました。それじゃあ夜明のためだけに、特製メニューを作ってあげましょう。真昼達には秘密ですよ?」
「…はい!二人だけの秘密です!」
嬉しそうに笑う弟の頭を軽く撫でると、深夜は夕食を作るためにキッチンへと向かい兄を手伝おうと、夜明は彼の後を追った。