おかしい。
午後七時過ぎ、バイトから帰宅した真昼は暗い廊下に突っ立って考えていた。
(何で、リビングの電気ついてないのぉ?)
いつもなら兄妹の誰かが夕食の準備をして、他の兄妹の帰りをリビングで待っているはず。
だが今日は、数歩先にあるリビングの扉から照明の明かりが洩れていない。
(玄関のドア開いてたのに皆出掛けてる、なんてまず有り得ないよね~…)
まさか泥棒でも入ったのか?、と思い兄妹達の部屋を静かに覗いてみるも荒らされた形跡は全くなかった。
(うーん…ずっと廊下にいるわけにもいかないしぃ…とりあえず~行ってみますか)
兄妹達の行方が気になるが、ここでこうしてぐるぐる考え事をしていても仕方がない。
意を決してリビングの前まで来ると、ゆっくり扉を開けた。
パンッ!パンッ!パンッ!
突然、何かが破裂するような音が響き真昼は「うぇっ…!?」と言葉にならない声を上げる。
音が止むと直ぐに部屋の照明がつき、一瞬眩しくて彼女は目を閉じた。
「Happy Birthday,真昼」
深夜の声に続いて、夜明と日暮も
「誕生日、おめでとう」
「はっぴー..ばーすでー..」
と、祝いの言葉を口にする。
真昼はそれを聞いてテーブルの上の卓上カレンダーを見た。
「…嗚呼!今日あたしの誕生日じゃん!」
「…忘れてたの…?」
「うん、たった今気付いた~。きゃはは、超うけるぅ」
「やれやれ…自分の誕生日くらい覚えておけ」
呆れ顔の夜明に向かって真昼は「だってぇ忘れてたんだもーん」と笑った。
八月二十二日。
今日は霧谷 真昼の誕生日。
***
少し遡り、前回の御茶会議後。
深夜の携帯に一通のメールが届いた。
『真昼の誕生日の件で相談なんですが、今年はいつもと違う感じにしてみませんか?サプライズパーティー、とか』
さっき夜明が言っていた“相談したいこと”というのはやはり真昼の誕生日に関することか、と深夜は思うとすぐさま返信のメール文を打ち込み、送信した。
『サプライズパーティー、面白そうですね。良いと思いますよ』
『それじゃあ日暮にもこのこと伝えておきます』
『サプライズの内容は明日の昼、真昼がバイトに行っているときに三人で決めましょう』
そして、今日。
三人はサプライズパーティーをするために部屋の明かりを消し、クラッカーを片手に真昼の帰りを待っていた。
「とまぁ、そんなこんなでこうなりました」
「だからどの部屋も電気ついてなかったんだぁ、吃驚した~」
サプライズの話を深夜から一通り聞くと、納得したように真昼はケーキを頬張った。
「真昼…これ、プレゼント…」
「兎のぬいぐるみ?超可愛いね~、ありがとう」
「あー…俺からもプレゼント」
「わっ、これ前から気になってたピアスじゃん!うれし~、ありがとね」
左に太陽、右に三日月のピアノをつけると「どうかなぁ?」と首を傾げる。
「似合ってるんじゃないか?」
「そう?これ、いっぱい使うね~」
「僕からは、これを。プリザードフラワーとアロマキャンドルです」
「プリザードフラワーって、枯れないやつだよね?綺麗~、ありがとう」
それぞれのプレゼントを受け取って嬉しそうに笑う彼女を、三人は満足げな表情を浮かべて見ていた。
霧谷家の、ちょっと特別な日の御話。
(!) この御話は8月22日に更新したものです