ある日の夕方。
「うーん…」
考え事をしているのか、先程から深夜は自室で腕組みをしたままじっと動かずにいた。
その様子を、扉の隙間から覗いている人影が二つ。
「どう思う?」
物音を立てないよう扉をそっと閉めると、夜明は小声で隣の妹に問いかけた。
「…どうと聞かれても…」
「む…」
思い返せば、今朝から少し深夜の様子はおかしかった。
しかし夜明達は、兄のことだから直ぐに問題は解決するのだろうと思っていた。
今の彼を見る限り、恐らく問題は解決していない。
二人は自分達に何か出来ることはないかと考えた。
「ただいま~…って、何やってるのぉ二人とも」
バイトから帰ってきた真昼は、廊下で突っ立ったまま動く気配がない兄と妹の様子を見て首を傾げた。
「実は…」
二人が深夜のことを話すと、真昼はけらけら笑いながら
「そんなに気になるんなら本人に聞いちゃえばいいじゃん」
「深夜た~ん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどぉ」
と、部屋の扉を開けてしまった。
***
「紅茶風呂に浸かってみたかった?」
「うむ。しかしそれを実現するには色々と問題があってね」
「どうしたら良いかをずっと考えていました。…って、三人ともどうしました?」
何とも言えない表情を浮かべる弟と妹二人に、深夜は不思議そうに訊ねた。
「…いや、てっきり…深刻な問題でも抱えてるのかと…」
「おや、十分深刻な問題ですよ」
「紅茶風呂なんてそう何度も出来るものではありませんから、しっかり考えないと」
それを聞いた三人は声には出さないものの、それぞれ胸の内で呟いた。
紅茶狂、と。