気がつくと、霧谷家の末っ子はオオオニバスの上に立っていた。
「………?」
はて、これは一体?と言いたげな表情で彼女は首を傾げる。
辺りを見回すとオオオニバスがいくつか浮かんでおり、それ以外には特に何もない。
突然足元が揺れ、その拍子にバランスを崩してしまった日暮は沼だか池だか分からない濁った水溜まりの中に落ちてしまった。
泳げない彼女は目をぎゅっと閉じ、腕を上へと伸ばした。
……ふと、椅子に座っているような感覚を覚え目を開いてみる。
「…ジェットコースター…?」
青い空、誰かの後頭部、下の方から聞こえてくる賑やかな音楽や人の声。
どうやら、どこかの遊園地のアトラクションに乗っているようだった。
ジェットコースターはゆっくりと上へ上がっていき、頂上につくと一気に下降した。
「んんんん……」
あまりジェットコースターに乗ったことがない日暮は悲鳴すら上げることが出来ず唸る。
何とか一周耐えたが、ジェットコースターは停止することなく二周目に突入した。
「…もう、いい…」
ぐったりとしている彼女のことなどお構い無しに、ジェットコースターは上昇していく。
そして頂上につくとまた下降するのかと思いきや、更に上へと上がっていき、瞬きをした一瞬のうちに今度は列車の座席に座っていた。
窓の外を覗くと、今は夜なのか辺りは暗く
星々が仄明るく煌めいていて、まるで宇宙を思わせる風景がそこに広がっていた。
「…すごい…銀河鉄道…!」
数日前に読んだ宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が頭を過ぎり
日暮は興奮したように呟いた。
***
「…という夢を見た…」
「そうか。夢の中の日暮も可愛いな」
午後三時過ぎ。
目の前で紅茶を啜る夜明に夢の話をし終えるとクッキーをつまんで、一口かじった。
「…ん、美味しい…」