紳士とギャル。
異なる人種の二人だが、実は共通の趣味がある。
「深夜たんって、ネットの世界でも紳士やってるんだね~」
家族共有PCの電源を落とした真昼は、後ろで優雅にティータイムをしている深夜を振り返って言った。
「どこにいても僕が紳士であることに変わりはありませんからね」
「え~、でもチャットの時くらい敬語は無しで良いんじゃない?」
「それが素ですからねぇ、今更口調は変えられません」
共有の趣味。
それはチャットサイトで様々な人と会話をすること。
「君の口調に異論は唱えませんけどね。チャットルームでも深夜たんって呼ぶの、どうにかなりませんか?」
「御兄様、とかの方が良かったぁ?あ、でもそれじゃああたしのキャラと合わないか」
妹の発言に肩を竦め
「普通に兄さん、とか、深夜で構いませんよ」
温くなった紅茶を飲み干すと立ち上がり、深夜は部屋を後にした。
残された真昼は暫く唸っていたが、ふいに顔をぱっと上げると呟いた。
「んー…やっぱり、深夜たんが一番しっくりくるんだよねぇ」
それが、彼女なりに親しみを込めた呼び方なのだ。
そんなことは、深夜自身がよく分かっている。
だから、彼女の呟きを聞いていた彼は廊下を歩きながら
「仕方ないですねぇ」
と、小さく笑った。