「日中国交正常化50年を記念して、シルクロードや中国ゆかりの絵画を残した画家、平山郁夫さんの展覧会が中国の敦煌で開かれています。」とテレビで報じていた。平山画伯の名前を聞くと思い出す事がある。

平山郁夫画伯が東京藝術大学の学長をされていた頃、芸大美術館での平山郁夫美術展に出かけた。駅で偶然上野をよく知るママ友に出会い、一緒に行くことになった。美術展を一通り見終わって、エレベーターを待っていると、驚いたことに平山画伯がお客様を案内してエレベーターを降りて来られたのだ。友人と顔を見合わせ「戻ろう!」と。私たちは平山画伯とお客様の後ろをついて回り、展示されている絵画の説明を、ご本人の声で聞くことができた。夕陽に照らされて歩くキャラバンの絵の前では「この太陽の中に釈迦三尊が描かれています。」と言われ、「月華厳島」の前では「私は夜、厳島に行った事はないんです。これは想像で描きました。」と。通り過ぎて来た絵画を見直すと確かに太陽の中には釈迦三尊がおられるし、静寂に包まれた青い夜の厳島神社は、とても想像で描いたとは思えなかった。

その後、私たちは芸大の学食で昼食を摂り、その頃水曜か木曜だけ開館していた黒田清輝記念館に寄ってから帰った。(有名な「湖畔」が出張中?で見られなかったのは残念だった。)
あれから何年が経ったのだろう。偶に友人と顔を合わせると懐かしい「あの日の奇跡」の話をする。