おひさま〜終章〜 #53
『付き合っていた彼女………史緒里、っていうんですけど。彼女、ユーイング肉腫って病気だったんです』「ユーイング、肉腫………?」『肉腫、っていうのはご存知ですか?肉が腫れる、って書くんですけど』「ガンのことか」『そうです。でもユーイング肉腫っていうのは、10代が最も発症しやすい、極めて稀な病気なんですよ』「そうなのか」『俺、母親が坂道総合病院の看護師で。史緒里は、母が担当医だったんです』「なるほどな。それで出会ったわけか」『でも彼女は、闘病の末に死にました。2年前の2月です』「…………辛かったろう?」『ええ………初めて好きになった人だったし、初めての彼女だったので。もう、全てを失ったような感覚に陥りましたね』「そうだったのか………」『それともう一つ。俺の母は看護師です。子どもの頃からその姿を見ていたから、自然と医療の道に進みたいと思っていました。決定的になったのは史緒里の死ですけど、いちばん大きな理由は母の存在です』「そうか………」『………これ以上は勘弁してください。史緒里のことを思い出したら泣いちゃいそうなんで』「ああ。ありがとう」ーーーーーーーーーーーーーーーーーー「俺の嫁さん、過去に大きな病気をしててね」リュウは遠くを見つめるように言った。『病気?』「胃ガンをやってる」『…………それっておいくつの時ですか?』「21歳」『AYA世代………』「アヤ………なんだ、それ?」『Adolescent&Young Adult。直訳すると『若年成人』という意味です。15歳から39歳の患者さんが当てはまります』「へえ………さすが医学部、よく知ってるな?」『メディアでも最近聞かれる言葉です。別に医学部だから知ってたわけじゃないですよ』「そうか」