手術が明日に迫ったこの日、俺たち3人は学校が終わるとすぐに病院に行った。
結局、英二たちはベスト4まで進出したものの、あと一歩で甲子園を逃した。しかし、英二はこの試合でホームランを2本打つなど、史緒里ちゃんとの約束はしっかりと守ってみせた。
俺たちが病室に着くと、そこには俺の母、井上さん、与田ちゃん、そして史緒里ちゃんのご両親がいた。ご両親にお会いするのは、考えてみれば今日が初めてだ。史緒里と仲良くしてくれてありがとう、とお父さんが頭を下げたので、俺たち3人も慌てて頭を下げた。
「あー、史緒里ちゃん」
英二が話しだす。
「ごめん。約束破っちゃったな」
「甲子園?」
「うん」
「でもホームラン打ったんでしょ?」
「たまたま、ね」
すると、お父さんはそうか、とどこか納得したような顔になった。
「史緒里が珍しくラジオを聞いててね、ずいぶんと一喜一憂しているから気になっていたんだが、なるほど、英二君の試合だったのか」
「そう。英二くんが約束を守ってくれたから、今度は私が約束守らないとね」
…約束なんて、したっけ…
「手術、必ず乗り越えてみせるから。文化祭も、体育祭も、楽しいこと何もやってないもん。そのためには……まだ死ねないよ」
部屋の空気が、一気に張り詰めた。いつも明るく振舞っている彼女の口から、初めて『死』という言葉がはっきりと出たからだ。
「…そうよね。まだ、楽しいことはこれからいっぱいあるんですものね」
空気を変えようとお母さんが明るく声を出したが、なかなか沈黙が無くなることはなかった。
『母さん、明日手術は何時からなんだ?』
俺も、この空気をどうにかしようとする。
「午前11時。なにあんた、学校サボる気?」
『史緒里ちゃんが心配なんだよ』
「浩介君、心配してくれるのはありがたいが、君は学校に行きなさい。史緒里には、私とママがついているから、大丈夫だ」
お父さんにそう言われてしまっては、致し方ない。わかりました、と答えるしかなかった。
『与田ちゃんは?』
「私もサボろうかと思ったんだけどね。今みたいにお父さんから言われたから、学校が終わったらすぐに来ようと思ってる」
『考えてることは一緒か。じゃあ、俺たちも終わったら速攻で来よう』
英二、潮ともに無言で頷く。
「みんな、ありがとう。私、負けないから」