ノストラダムスの散歩道

 

俺は、異国を旅する詩人。俺は、訳もなく色々な国々を彷徨っていた。訳もなく、というのは嘘だ。失恋したのだ。俺は勘違いをしていた。彼女と愛し合っていると勝手に思い違いをしていた。そして今、すべてを忘れるために異国をたださすらい歩いていた。
すると、ある時、体に異変が起きた。急に体が燃えるように熱くなり、沸き上がるような力が全身をみなぎった。
何が起こったのか?頭の中で『ノストラダムス、ノストラダムス』と声がする。
俺は、自然とその町の大きな図書館に行き、『ノストラダムス』に関する記述を熱心に時間をかけて調べていた。
驚くことに、この地は予言者ノストラダムスの生地であった。
俺はホントに無知であった。急に好奇心が湧いてきた。『ノストラダムス』という頭の中の囁きから、この図書館に来て、ここがノストラダムスの生地と知る。どう考えても、これは、まったくの偶然とは思えない。
俺は何かが隠されていると思い、むさぼるように書物を読んだ。その中に幻の散歩道、『ノストラダムスの散歩道』という記述があった。
ある一定の散歩道の間の百メートルをその時のノストラダムスと同じ歩幅で同じ足跡を歩く者、現われ、不思議な力を体内に得、一週間後、ある予言をし、やがては地球の危機を救うであろう。
そんなことが書かれてあった。
『不思議な力を体内に得』か、まるで、今の俺みたいだな。胸がドキドキワクワクしてきた。俺は、もしかすると『ノストラダムスの散歩道』をノストラダムスと同じ歩幅で同じ足跡を歩いたのか?もしかすると俺は選ばれし者なのか。
それが、真実かどうかは、一週間後に証明される。
それから、俺は、高熱を発し、宿で寝込んでいた。
毎日毎日、うなされる日々。昔の恋人、愛美の姿が見えた。愛美とは、俺がとことん愛し俺がとことん捨てられフラレた女性だ。すべてを忘れるために旅をしていたが、一時も愛美を忘れることはできなかった。
苦しくて、苦しくて、時間の感覚がなくなって行った。「愛美、助けてくれ!」俺は苦しみの中で不思議にもそんな言葉を叫んでいた。夢の中の愛美はニッコリとやさしく手を俺に差し出した。
俺は愛美に導かれ再び不思議な世界の扉を開け、その中に入っていった。ここが夢か現実か、まったくわからくなってきた。蜃気楼のようなディープな夢の中、もしかしたら、ファンタジーの世界かも。段々と苦しみが薄らいでゆく。
ふと目覚めるとそこは、現在ではなかった。そこは、確かな未来であった。
かなり、進歩した、地球。2×××年の地球だ。
その年の7月27日、その地球に向かって、大きな隕石が墜ちてきて、地球は一瞬にして滅亡した。
「あァ!」俺は大声を上げ、夢から目覚めた。
恐ろしい夢を見た。まるで、ディープインパクト。インディペンデンスデイ。アルマゲドン。隕石の映画の世界だ。ただ単に何かを考えさせられる面白い娯楽映画では済まされない。
しかし、日が経つにつれて、もしかしたら、これが予言なのかもしれない、と思えてきた。日が経つにつれ、俺は選ばれし者なのかもしれないと考えはじめた。これが現実ならば笑い事では済まされない。俺は、一体どうしたらいいのだ。未来の地球を救うには・・・・・・・・・・・・。この俺に果たして地球が救えるのか。
しっかりしろ!十中八九、俺は予言者ノストラダムスから、世界でただ一人、選ばれし者なのだ。落ちついて考えるのだ。自分の本能を自分の理性を信じるのだ。

 

そして、俺はさらに不思議な夢を見た。俺の分身、赤木大河、サファイア12という者達の夢の冒険ファンタジーを。

 

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21世紀に赤木大河ことサファイア12という者がいた。若き頃、師匠と呼ばれる人物のもと、チベットの奥深くで、太古から伝承されてきた『石術拳法』を学びその中にある『宝石術』の一部を会得した。師匠が設立した秘密組織『ジュエル』における宝石術サファイアの使い手である。師匠やダイヤモンド7の修行の目的は、わかる。それは『生命の花』といわれる「フラワー・オブ・ライフ」と一体となるため、日夜、修行をしているのだ。
古くから知られている神聖幾何学の一つ。宇宙の万物は幾何学的で、すべてこの「フラワー・オブ・ライフ」という単一のパターンで成り立っていると師匠やダイヤモンド7は考えている。師匠は今のチベットに、それを会得する鍵があると感じ過去からタイムスリップしてきたのだ。師匠こと彼の名は、アルセーヌ・ルパン。そして、今、赤木大河は、己を深く見つめるため、一人日本で暮らしていた。赤木大河は、自宅で物思いにふけっていた。ふと、誰かの気配がした。大河は自分の部屋のソファーから立ち上がり、身構えた。宙におぼろげな影が見えてきた。その人影は、宙から、ひょいっと、赤木大河の前に飛び降りてきた。
「ハハッ、大河の兄貴、久し振り」と若い男は言った。若い男は、赤木大河よりは、十歳くらい若く見えた。「時刻桃次郎ことルファイア11か」と大河は二コツと笑った。
 時刻桃次郎ことコードネーム、ルファイア11。幻の宝石、ルファイアの使い手。赤木大河ことサファイア12の師匠ルパンや師範ダイヤモンド7にとてもかわいがられている。若いが宝石術の達人。ただ一人、幻の宝石ルファイアの使い手である。
「トキ、久し振りたなァ。何用だ?」
「いきなり、用件かい?相変わらず、せっかちだなァ、兄貴は。つれないなー」桃次郎は笑う。
「時間はアッという間に過ぎてゆく。俺はお前みたいに若くないんでね」
「ハッハッハッ。確かに、兄貴は二十七歳で俺は十七歳。わかりました。師匠から水晶球を預かってきました。不思議な水晶球が発見されたのだって。俺と兄貴でこの水晶球の謎を解き明かせとの指令です」
 時刻桃次郎は、大きな水晶球をどこからか取り出して、赤木大河に見せた。 大河はその不思議な水晶球をまじまじと見つめる。赤木大河ことサファイア12は、時刻桃次郎ことルファイア11に言い放った。
「Gフォーメーション」とサファイア12は二人に通じる暗号を言った。
「ラジャー!」とルファイア11。
 時刻桃次郎は水晶球を宙に投げ飛ばした。そして、桃次郎ことルファイア11は左手の人差し指にはめてある指輪の宝石ルファイアからレッドパープルの光線を浴びせた。赤木大河ことサファイア12は左手の人差し指にはめてある指輪の宝石サファイアからブルーの光線を浴びせ、水晶球は2つの光線によって宙に浮く。水晶球はしばらく2つの光線を浴びていたが、今度は水晶球自体がキラリと眩い閃光を発し、赤木大河の部屋は闇に包まれ、水晶球と赤木大河と時刻桃次郎が二十一世紀から消え去った。

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 淀んだ闇に覆われた部屋に男が立っていた。 サファイア12とルファイア11は、その男の眼光に畏怖を感じた。そして、その男の手には先ほどまで、二十一世紀で二人が見つめていた水晶球があった。この水晶球を駆使して、彼はこの世のすべてがわかった。彼は占星術でこの世のすべてがわかるのであった。
「この男は一体・・・・・・・・・・」
 サファイア12とルファイア11はなぜか同時に悟った。大予言者であり、各地をペストから救った男、ノストラダムス・・・・・・・・
 男はその重い口をひらいて、ゆっくりと語り始めた。
「宝石術の使い手、サファイア12、ルファイア11、あなた方がこの時代にこられることは、占星術ですでにわかっていた。そこで、私の方から、前々からお願いがあったのだ。あなた方にしか頼めないお願いだ」
 サファイア12が言った。
「大予言者ノストラダムス様が、俺達に一体、どんな頼みがあるのですか?」
「そう、あなた方はまだ、宝石術を完全に習得していない。だか、いずれ、二人が宝石術を習得した時、頼みたいことがある」「それは、何ですか」とルファイア11。
 ノストラダムスの眼光がさらに光り、二人の目を見つめて再び語り始めた。
「・・・・・・・・・・・二×××年。その年の七月二十七日。その地球に向かって大きな隕石が堕ちてきて、地球は一瞬にして滅亡してしまう・・・・・・・・・」
「だから、二人で力を合わせて、未知の領域の宝石術パワーで巨大隕石を、一瞬で粉々にして塵にして欲しいのだ・・・・・・・・・・・・・・・・」
 あまりに想像外の話にサファイア12は絶句。ルファイア11は体中に震えが走った。
「俺達二人が宝石術を完全に会得して、二×××年の未来に瞬間移動して、巨大隕石を粉々の塵にする・・・・・・・・・・」
 サファイア12とルファイア11は目と目を合わす。そして、二人の視線がノストラダムスの鋭い眼光へ。
「そう、それまでは、師匠ルパン君のもとで、ひたすら修行したまえ」
 なぜか、師匠ルパンという言葉で、三人の心が和やかに一つになった。そして、ノストラダムスの手もとから水晶球がキラリと稲妻が走り、気がつけば、赤木大河ことサファイア12と時刻桃次郎ことルファイア11は、二十一世紀に戻っていた。
「ウソじゃないよな。ホントの話だよな」と桃次郎。
「どうやら、俺達は本物の二十一世紀のヒーローにならなきゃならないようだ」と赤木大河。

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そして、2XXX年七月二十七日の一週間前、サファイア12とルファイア11の頭脳の総力をあげた一発の『ノストラダムスのミサイル』がすべてを計算・分析つくされ、隕石に向けてはなたれた。
特殊ミサイルに巨大隕石も一瞬にして、粉々の塵と化した。何ひとつ地球は悪影響を受けなかった。流石二人の頭脳が結集された『ノストラダムスのミサイル』
地球の人々は、何が起こったのか、何があったのかさえ、わからない。今までの平和な日々が、これからの平和な日々がこういう事実のもとにあるということを。知っているのはサファイア12とルファイア11と大予言者ノストラダムス。他に誰も知るよしもなかった。予言で未来の地球を救ったさすらいの異国を旅する孤独な詩人とノストラダムス達という存在を。