檸檬∞2部
林檸檬と杉山真は同じ大学に通う十九歳である。幼稚園・小学校・中学校・高校がいっしょで、家が近所ということもあって、とても気心が知れている。檸檬は時々、真に『お題』を言って、真はそれをテーマにショートショートを書いていた。まァ、いつも『キャバクラ檸檬』だが。また真は真で檸檬に『お題』を言って、檸檬はそれをテーマに詩を書いていた。
「そろそろ、檸檬の詩が読みたいな」と真は言う。
「私も真のショートショートが読みたいな」と檸檬も言う。
二人は自由気ままに色々なことを創作する。この二人はいいコンビである。恋人同士なのだろうけど、なにしろ長い付き合いで、変な表現だが恋人を飛び越した恋人だ。いつも、どうでもいいようなくだらない話をして、ふざけあいじゃれあっている。
「檸檬、檸檬。変わったことないか」
「また、いつもの抽象的発言ね。真、私達、来年で成人するのよ。少しは大人になってよ」
「はい、はい。檸檬は大人だよ。久し振りに、詩の『お題』を出そうかな」
「『お題』ね。真の『お題』は、時々、訳のわからない時があるからね。ホント言うと、今頃、詩が思いつかないの。作家じゃないけど、スランプみたい。でも、真の『お題』がきっかけで、もしかしたらスランプから脱出できるかも」
「そうか、檸檬はスランプか。でも檸檬なら大丈夫。俺は、檸檬の才能を認めているもん。さーて、『お題』は何にするかな。・・・・・・・・・『月』なんてのはどうだ?」
「えーっ、『お月様』。どこから出てくるの、『お月様』なんて」
「だって、面白そうじゃない。『ツキツキボウシツキツキボウシ』なんてね」
「また始まった、もう、まったく意味不明。いいわ、『お月様』がテーマの詩を作るわ」
「そうだよ、なんだかんだって、今まで『お題』をギブアップしたことないじゃないか。ゆっくり考えて、どうせヒマなんだろ。俺はアコースティックギターの練習でもするかな」
一ヶ月前に、真は何を思ったか、突然アコースティックギター教室に通っていた。
「人をヒマヒマ人みたいに。ところで、ギター教室はどんな調子?」
「指が痛くてたまらないよ」
「早く私の前で、『なごり雪』を弾いてよ」
「それって、物凄く古い曲だね。どうして、『なごり雪』なんだよ」
「歌詞を知らないの?『いま春が来て君はきれいになった』女性はいつもきれいでいたいのよ。きれいと言われたいのよ」
「檸檬はいつもきれいだよ。もちろん、素晴らしい魅力もあるけどね」
「真、大好き。よーし、これから家で詩をひねり出すので浮気しないで待っていてね」
翌日の暖かな昼下がり。
「はい、これ」と檸檬はパソコンで打ったA4の紙一枚を真に手渡した。
その紙には『月が綺麗ですね』とタイトルの詩が書かれてあった。
「月が綺麗ですねか。面白そうだね」
「まっ、いいから、読んで見て」
月が綺麗ですね
4月、桜が散った
また、来年、そんな周期
季節は巡り風に吹かれて
貴女と別れただ桜と
川の水面を見つめている
そして、1年
また、違う恋に酔いしれ
人生を語っている俺
ただ、なぜか貴女を思うと
胸がキュンとする
もうすぐ散る桜の花びらを見たような………
鳥みたいに鳴きながら
大空を飛びたい
でも、俺は
泣きながら生きている
俺も鳴きながら生きていたい
人の心は寂しくて
人の心は儚くて
でも、時に輝いて
常に迷っていたら
背中をツンツン突かれた
貴女の微笑み
あァ、夢じゃないかしら
貴女が微笑んだ
その微笑みは
俺に微笑むだけのものだった
あァ、貴女を愛さずにはいられない
俺と貴女をつなぐ言葉
「Love」
I Love you