檸檬とホームズのカン

 

 檸檬には不思議な能力があった。

例えば、CDであいみょんを聴いていたり、本で「君たちはどう生きるか」を読んでいたりすると、心が熱くなり宇宙の果ての空間に飛んで行ってしまうのだ。

実際に宇宙に飛んで行く訳はなく、そんな気になるだけだ。

音楽を心から愛する人が、読書を心から愛する人が、ジーンと感銘を受けて心を揺さぶられることはよくあることである。

さて、今日もあいみょんの「マリーゴールド」を聴いて眠るぞ、と檸檬は思うのであった。

突然、本の中からシャーロック・ホームズが現れた。

「さてさて、檸檬よ、知恵比べをしないか?」

「そんなもん、勝てる訳がない」檸檬はホームズに面と切って言った。

「そんなことはない。檸檬には私を凌駕する分野がある」

「そんなバカな」檸檬はあきれる。

「ヒントは私は生涯において、愛した女性は一人だけだ。要するに恋愛にうとい」

「なるほど確かに。シャーロックは、カッコイイが色男ではない」

「ゲームをやろうじゃないか。我がホームズの熱烈な愛読者よ」

「どんなゲームです?」

「今日檸檬が恋に落ちれば君の勝ち」

「ホームズさんの勝利は?」

「熱烈な愛読者に頑張ってほしいのさ」

「さすが、ホームズさんは善人だ、ありがとう。でも、檸檬の知り合いは少なく、バイト先のキャバクラだけです」

「少しは努力してもらわないと。街ゆく人。すれ違う人すべてにチャンスあり。何か事件が起こるかもしれんぞ、檸檬」

「名探偵コナンくらい事件に遭遇すればね。・・・・・・・それに私、愛を知らない」

「私だって、生涯一度切りだ」
「そんな難しい愛を捕まえろと」

「そうだ、私が、モリアーティと決着をける前に」

「わかったわ」

「シャーロック・ホームズのカンでは檸檬が何かを掴む気がするのだ」

 ・・・・・・・・・・・・・

「コペル君(君たはどう生きるか)、愛を捕まえる天文的確率は?」

「檸檬姉さん、僕はまだ子供なんだぜ」

 さてさて、そろそろキャバクラに出勤の時間だ。

 今のところ、なにも起こらなかったなァ。

「どんなカンよ。ほんとホームズさんて、いい加減」

外はシトシト雨が降ってきた。

なんか暗い。

「今にもフラレそう」

とぼとぼ檸檬はバイト先に向かう。

昨日映画「ボヘミアン ラブソディ」を観て感動した。

もともとあの迫力のある素敵な声が好きだった。

ゲイだったのか。

ゲイでありながら、好きな彼女がいた。

そして、・・・・・・・・・・。

それ以上は言えないわ。

とにかく、すばらしい仲間に囲まれていた。

独りぼっちの檸檬さん?

私は私の一生を終え、それで終わりか?

輪廻転生はあるのか。

小さな蜘蛛を見ると殺生はしない

死んだお父さんの化身に思われるのだ。

多分、死んだらそれで終わりであろうが。

一昨日、一日中あいみょんを聴いていた。

エロいか、エモいか。

最近の言葉はわからぬが、「マリーゴールド」って曲はよい。

「ひかりもの」も、「夢追いベンガル」も。

「裏切ったはずのあいつが笑ってて〜」なんか悲しいね。

フレディ・マーキュリー様、あなたの一生は幸せでしたか?

世界の人々の胸を熱くさせる音楽を作ったのならば、幸せ! ですね。

君たちはどう生きるか。檸檬はこれからどう生きるか。それは誰にも分らない。ただ生まれてきた。生きるチャンスを誰かからもらって。産まれて、すぐに死ぬ赤ちゃんもいる。檸檬は25年も生きてきた。傘をさしながら、メリー・ポピンズになりたいな。さァ、キャバクラに着く。

「檸檬さん、もう指名が入ってます」

 ドキドキ。誰だろうか。大きくスマートな男がいた。

「吾輩はアルセーヌ・ルパン。今宵貴女を奪いにきた」

 檸檬は即答した。

「檸檬のすべての恋心を奪ってください」

「まかせたまえ、私の、熱烈な愛読者、檸檬クン」