俺はトイレットペーパーの芯を
ゴミ箱に向かって投げた
芯はゴミ箱のカドに当たり
弾けてコロコロ転がって
ピタッと円柱として立った
その瞬間の出来事だった
芯の筒から赤い閃光が発せられ
芯を中心にゴトンゴトンと
家が回り始め回転しながら
ドドド・バキューンと
我が家が月に向かって
高速で飛び始めた
帰る頃には俺はかぐや姫を
ゲットしているのだろか?
まっ、たぶん、夢だろうけどね

ゴミ箱に使い終えた

トイレットペーパーの芯を
投げようとした
が、一瞬時が止まった
『絶対外したダメだ』
そんな思いが全身を駆け巡った
たったゴミ箱に芯を
投げ入れるだけなのに
何かとてつもなく大きなことに思えた
そして俺は精神を集中させ
魂を込めて
1、2、3で芯をゴミ箱に投げた
芯は弧を描いて
ゴミ箱に吸い込まれていった
この呼吸だ
人生何をするにも絶対外せないものがある

以上、青木優詩集でした」


「ハハハ、優さんは、トイレットペーパーの芯で人生を語れるんですね」礼子はツボにはまったのか大爆笑した。

 そんなとりとめない会話をしていたら、倉敷に着いてしまった。俺達は情緒ある町並みをじゃれあいふざけながらぶらぶらと歩いた。特に小物類が売ってある同じような店に何度も入っては出た。もちろん礼子の趣味である。アイビースクウェアで、ソフトクリームをほうばりながら、丸いテーブルの回りに腰掛け、三人でいつものように将来の夢を語った。その日以後、俺と礼子の仲は急にとても密接になった。そして、ある日俺は礼子の要望通り以前書いた『ベクトルの行方』という短編小説の原稿を礼子に手渡した。

 短編小説
 『ベクトルの行方』

 

 一九八六年春、俺は今、大学生になった。学生生活は割合に忙しく、部活はサイクリング部に入っている。毎日、林道を走っている。身体は傷だらけ。しょっちゅうコケてばかりである。マウンテンバイクを起こしては、また走り出す。
 俺の人生そのものか。ちょっと大袈裟か。でも風と一体になった気がするよ。時折、自転車を停めて野草をコンパクトカメラで撮ったりする。俺に花の心がわかるかって?花は俺の心をなごませる。それだけでいいじゃないか。
 小さい頃は教師になるのが夢だった。今は人を教える気もなく、むしろ色々なことを学びたい。今は生きたいのさ。ただ生きるのじゃなく、大いに生きたいのさ。そのためには、まず走り出さなきゃね。未来に向かって。
 時々センチメンタルな時は過去、あの頃を思い出して。思い出すのは俺が高校を卒業して、どこへも行くあてもなかった浪人時代の頃。自分にとって様々なことがあり、つい思い出してしまう貴重な日々。
 あの頃は、今の自分を目指して勉強に励んでいた。そして今、あの頃を懐かしんでいる。人生ってこんなものか。いや、まだまだ半人前どころか、ひよこみたいな俺。これから何年もかけて、この澄み切った青い空に羽ばたいていきたい。

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 俺こと木村篤は高校を卒業し、自宅浪人の身であった。と言ったら少し聞こえがいいが、あてのない日々を送っていた。そんな折り、風の噂で昔の友人の死の知らせを聞いた。調べてみると、それは本当のことであった。
 言葉では言い表せないほどのショックであった。交通事故だった。中学生の時の同級生で、何をするにもいっしょに行動していた。みんなの憧れの的でなぜか俺達は、共に勉強し、共に遊び、共に愛を夢を語った。彼は親の仕事の都合で、中三の時、広島県から愛知県に転校していった。