回想 流れてまわる、運河と観覧車
一年経つのは、誠に早いものである。後二日で仕事収めになり、もう正月だ。昨年は、オフクロと凄い豪華版の想い出旅行ということで、仕事収めとともにハウステンボスに旅行に行った。博多まで新幹線が遅れ、ギリギリ、ハウステンボス号に乗り込みセーフ。
その日は、疲れて部屋でくつろぎ、明日に備えることとした。次の日、朝から色々な催しもの会場を見てまわった。たくさんあったので、選ぶのに困るほどであった。まず、人の密集地から離れ歩いていると、運河から遠くに観覧車が見えてきた。その全体の景色をバックに、オフクロを入れて、何枚かデジタルカメラで写真を撮った。
2人、しばらく歩いた後、また密集地に戻った。映像コンサートコーナー、ホラーコーナー、水の大切なお話コーナー、宇宙旅行コーナー等、非常におぼろげな記憶の中を今現在、俺は彷徨っている。知らぬうちに先ほど写真を写した、遠くに見えた、観覧車が目の前で回っていた。
俺とオフクロは、すぐさま観覧車に飛びついた。乗車券を購入し、そんなに人は並んでいなかったので、ちょっと待った後、俺の番がきたので、ひょいっと観覧車に乗ったが、オフクロは、ちょっと足を痛めていたので、軽い悲鳴とともにどうにか乗り込んだ。
「大丈夫?」と俺。
「一端、止まってくれるかと思った」とオフクロ。
「それはないよ」
なんてことを話していたら、素晴しい景観。
「ほら、さっき、俺達が歩いていたところが見えるよ」
「ほんとだね」
なんてことを話していたら、一回転。
ここが肝心、ここが勝負。
俺は、ひょいっと地面に降りる。オフクロは用心して、どうにか地面に降りた。それから、俺達は道なりに歩いて行った。外国人の男女がエレキギターで様々な曲を演奏していて、人だかりができていた。その時間帯に一番盛り上がったのは、『情熱大陸』のテーマ曲が流れていた時であった。俺達は、しばらく演奏を聴いていたが、あまりに外が寒いので、ホテルの部屋に帰った。流れる記憶の中でホテルに帰ると午後五時過ぎであった。
2人とも風邪を引いていた。仮面をかぶって、ダンスする催しに参加する予定だったが、ホテルのベットで寝過ごした。はっきりいって、今回、お金等、ハウステンボスは、俺達には張り込みすぎたかもしれなかった。だが、それだけ、2人だけの素晴しい想い出を作りたかった。おそらく、もう二度とくることのないハウステンボスで。
午後八時頃にホテルで、ミニコンサートをやっており何曲だっただろうか、だいたい十五曲の名曲を聴いた。やはり、『情熱大陸』のテーマが一番(今度はバイオリンであったが)よかった。このミニコンサートは、オフクロは「よかった、よかった」と絶賛していた。だけど、こともあろうに、目玉のイルミネーションをあまり見ずに帰ってしまった。ほとんど、2人とも部屋で疲れて爆睡していたのだ。そんな感じで気づいたら、旅行を終え、家に帰っていた。
ほんとを言うと、はじめて来たようなことを書いたが、実は俺は過去にハウステンボスを旅行で以前に訪れたことがあった。オヤジが死んで、オフクロと結構、色々と観光旅行をした。その時も、ハウステンボス号に乗った。着いて早々、気球に乗る予定だったが、気球がこわれていて乗れなかった。
だいたい、することは同じであったが、ただ季節が違った。あの時は、確か夏だった。夜、スターウォーズを簡略化したような劇を見た。とても面白かった。オフクロと腹いっぱい笑った。もう、かれこれ、十五年以上前なので、詳しい出来事は覚えていない。ただガンガン元気にメチャクチャ楽しかった。
だから、この度も同じホテルにした。同じ場所で、さらにさらに同じ空気を吸いたかった。俺はもう一度ここへ来たかった。実はオフクロのハウステンボス旅行は、三度目である。姉が一回、別のところに、旅行に誘ったのだが、オフクロはその時、ハウステンボスに行きたいと言い、結局、姉はオフクロとハウステンボスに行った。この度のこの地の旅行は、俺は二度目、オフクロは三度目であった。
その年に、どこか旅行に行けば、後は、すっからかんの貧乏生活だ。年に一度の贅沢が結構続いた。俺は、オヤジの死を忘れるのではないが、オヤジの死から離れて、オフクロと元気に楽しくやりたかった。それは、オヤジも望むことと思ったから。心にオヤジは共に生きている。旅行は、そのうち、毎年という訳には、いかなくなったが。多々の旅行の中で、ハウステンボスはなぜか特に楽しくて、想い出に残っている。
家に帰って数日後、カメラ屋で2L版の額を二枚買っていたら、白いコップが売っていた。写真をはりつけられるというのだ。俺は、二枚写真を選んで、コップに画像を落とし込んでもらった。明後日は、仕事収めである。俺とオフクロは、今年はおとなしく、しかも正月は寝正月っぽい。2人ともまた、風邪気味である。今、オフクロと俺は、居間でテレビを観ながら回想する。
「ホント、一年って早いよね」
「どんどん年をとるね」
テレビ台の上の二つのコップ。
「でも、運河と観覧車は今でも忘れないよ」
そう、俺は運河から見える観覧車をバックにオフクロをデジタルカメラで写した。一枚は、ちょっとオフクロが大きめの写真。一枚は、ちょっと小さめの写真。
今、目の前のテレビ台の上で、二つのコップにはりついて、輝いてる、輝いてる、素晴しき2人だけの想い出が・・・・・・・・・・