時の旅人 サファイア12 真夏の夜の夢
21世紀に赤木大河ことサファイア12という者がいた。
若き頃、師匠と呼ばれる人物のもと、チベットの奥深くで、太古から伝承されてきた『石術拳法』を学びその中にある『宝石術』の一部を会得した。
師匠が設立した秘密組織『ジュエル』における宝石術サファイアの使い手である。
時をコマ切れに見切る、『瞬時拳』という瞬時の恐るべき技や身体を分身さす『分身術』、
また、この二つを同時並行し行う技、『瞬時拳亜流三分身』、さらこの技に磨きをかけて、
後々『瞬時拳亜流五分身』『瞬時拳亜流七分身』という奥義を見につけていった。
アンモナイトが石術拳法のパワーの源であり、なんとそのアンモナイトを駆使して、思いのままにテレポテーションしたり、異次元トンネルを通り、過去や未来やパラレルワールドへ行くこともあった。変幻自在に生きていた。
赤木大河ことサファイア12の師匠や師範は、『生命の花』といわれる「フラワー・オブ・ライフ」を研究していた。古くから伝わる神聖幾何学の一つ。
宇宙の万物は幾何学的で、すべてこの「フラワー・オブ・ライフ」という単一のパターンで成り立っていると考えているのだ。
師匠や師範はこのチベットの奥深くの地と石術拳法が『生命の花』となんらかの因果関係があると信じており、その謎を解くために宇宙の秘密を解き明かすために日々日夜修行をしていた。
赤木大河は、恋人の川島藍子の死とともに、いつしか秘密組織『ジュエル』のもとから去って行った。そして、時は流れて……………。
赤木大河は夏の暑苦しい夢の中にいた。まったく知らない世界にいた。
ここは今、戦争をしているのか?だが、俺は戦争を知らない世代である。気づくと空から無差別爆弾。逃げ惑う人々。これは一体何なんだ。ここは東京か?わからぬままに新聞を拾った。難しい字で書かれてある。真意を汲み取らねば。何が書かれてあるのだ。
なんとなくだが、わかってきた。小さい頃、図書館で「はだしのゲン」という漫画を読んだ記憶がある。
そして、今日は8月1日。8月6日、広島にB29エノラ・ゲイから原子爆弾が投下される。そして、まさに地獄絵図だ。赤木大河は決心した。原爆投下を阻止することを。その日大河はなんとか広島の地に来ていた。もう、すべて天性の勘で動いていた。そして、8月6日の朝。そろそろ何かが起こる。
赤木大河ことサファイア12は、右手の人差し指を空に差した。人差し指の銀のリングに埋め込まれている小さなサファイアから青い光が発せられ、サファイア12の身体は青に染まった。
次の瞬間、宝石術、奥義『飛鳥(トブトリ)』で空に高速で舞い上がる。しばらくして、大きな飛行体が目に入った。かなり、でっかい。そして、一か八か、サファイア12は命を懸けて勝負に出た。その飛行体エノラ・ゲイから投下された原子爆弾をサファイアビームで捕らえ、奥義『石化術』で石にかえ、ウラン原子の核分裂を防いだ。
広島は地獄絵図ならなかったのだ。その日の晩、サファイア12は皇居にいた。
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昭和天皇はコツコツとする足音に振り向いた。
「誰だ!」と昭和天皇。
「私は未来からの使者、サファイア12。別に怪しい者ではありません」
「ここは誰も入れぬはず。私に一体何の用だ」
「本当なら、今日、8時15分に広島に原子爆弾が落とされたはず。私はそれを阻止してきました。ちょっと歴史を変えました。あなたは戦争について色々なことを知っていらっしゃる。おせっかいですが未来の漫画を読んでくだされ」と言うとサファイア12は消えていなくなった。
昭和天皇の前に数十冊の「はだしのゲン」という漫画と石と化した原子爆弾が置かれてあった。そして、何かが昭和天皇の胸を揺るがせた。ある重大な決断をした。
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8月7日、昭和天皇による日本の戦争全面降伏。
8月8日、終戦、本当に歴史は変わったのだ。
※ ※ ※ ※
再び、赤木大河の8月1日の寝苦しい夜。赤木大河は真夏の夜の夢から目を覚ます。
やはり、すべて、夢だったのか?奥義『飛鳥(トブトリ)』、奥義『石化術』は?赤木大河は8月6日に平和記念式典に参列した。
〔8月6日〕
さっき8時15分になり
一分間の黙祷をした
原爆で死んだ人
今もなお苦しんでいる人
様々な思いが駆け巡る
毎年、暑い夏に
やってくる8月6日
いろんな人のメッセージが
このヒロシマの空を埋めつくす