冬に俺達四人が集まって初詣に行こうとした時、男ばかりじゃ味けないと右京は信玄に、高校の頃仲が良かった霧島礼子を誘うように言った。
えぇーと言いながら信玄は電話ボックスに入った。信玄も右京には逆らえない。礼子は高校時代、美人で男子生徒に人気があった。しばらくして信玄は電話ボックスから出てきた。
「彼女、来るって」と信玄が言った。
しかし、来ると言っても礼子はこっちが四人だとは知らない。信玄一人だと思っている。やがて待ち合わせ場所に礼子が現れた。
「ちわー」
信玄を先頭に右京、春賀、俺があいさつする。
「明けましておめでとうございます!」
礼子はビックリだ。右京はニヤリと笑った。網にかかったぜ、もうどうしようもないぜ。相変わらずふてぶてしい奴だ、飛島右京。まァ、みんな同罪か。俺達は広島駅から宮島までJRで行く。
目指すは厳島神社。JRのフェリーで宮島へ渡る。礼子の会話の相手はほとんど信玄だ。時々、右京と春賀が訳のわからないことを言って礼子をからかう。
礼子が急に俺に聞いた。
「優さん、まだテニスされているんですか?」
「いや、高校以来してないよ」
よく俺がテニス部だと覚えていたなと思いながら答えた。一年いただけなのに。ホントはテニスはあまりしていない。ほとんど球拾いだったよな。
「そう。結構、青木さんていったらテニスを連想するんですよ。テニス部の人って、いつもグラウンド走らされていたじゃない。優さん、いつも先頭で気持ちよさそうに走ってた」
「優は足の速さだけじゃないんだ。実は小説も書ける。即興詩人でもある」と右京は礼子に言った。
そんな高尚なものじゃない。言葉のお遊びだ。
一瞬、礼子の目が点になった。
「ホントですか、優さん?」と俺に聞いた。
「礼子が信用してないみたいだぜ。優、何か即興で詩を言ってみろよ。これは、飛島右京からの命令だ」
右京からのとても断りたい命令だったが、右京の家でいつもご馳走になっている出前が目に浮かび、俺は命令に従うことにした。
「俺には秘密がたくさんある
例えば
M78星雲から来たということとか」この程度の詩。
「えぇー、優さん、ウルトラマンだったの。すごく変な詩。だけど、まあまあかな。他に詩はないの?」
「俺の彼女は
アンドロメダ星雲出身で
地球のことは何もわからない
今、愛について
教えてやっているところさ」
「宇宙シリーズですか。モテモテなんですね、優さん。宇宙では」
「昔、ある娘とデート中
俺は言った
『胸さわっていい?』
彼女は笑って
『言わずにするものよ』」
「ひぇー、ホントにそう言ったの?優さん。それは、いけませんね、ハハハ」
俺の即興詩?は、少し礼子のツボにはまったようである。
「こんな変な詩ばかりじゃなく、もっといいのを考えろ」と右京が言った。
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「愛って
この世で一番
素晴らしい言葉だと
思っていたけど
この世で一番
残酷な言葉かもしれないね
愛し合っている二人が
一緒になれないのなら」
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「風に吹かれて
ゆらゆら揺れる
葉っぱを見ていると
O・ヘンリーの短編小説
『最後の一葉』を思い出す
決して揺れない
『最後の一葉』
葉っぱに愛がこもってる」
「わぁ、すごいよ。優さん、ホントの詩人なんだ。是非、今度、小説も読ませてくださいね」
「・・・・・・・・・・・あァ、いいよ。それじゃあ、礼子、右京はどんな奴だと思う?」
「頭のいい人」礼子は即答した。
実際この五人の中では、右京が一番勉強ができた。大学に行かずデザインの道に進
んでいるが。
「俺が有名なデザイナーになったらモデルになってもらおうかな」
右京は礼子に言う。
「早くなってもらわないと。アッという間に私、オバサンになっちゃう」
「礼子はオバサンにならない」と信玄。
「ありがとう。信玄はオジサンにならない」
「やれやれ」
と春奈春賀が言って、続けて喋った。
「俺の自転車屋にパンク修理してくださいって、オバサンになってから来るなよ、礼子」
やはり春賀は自転車屋志願か。
「その時はタダにしてもらう」と礼子。
「みんな会話がオジサン、オバサンしているぞ」と俺が言った。
「水族館に行きましょう」礼子は言った。
「ラッコはいるのか」
「わからん」
「行けば何かがいるはずだ」
「そうだ水族館に行くんだ」
みんな口々に言った。
そうして俺達は水族館に行った。
ラッコはいなかったが、かわいいアザラシがいた。
キャー、キャーとはしゃぐ礼子の黄色い声も魅力的だった。
急に俺は誰かと愛し合いたくなった。
俺の頭の中で、右京のように佐野元春の音楽がかかった。
(いつかは誰でも愛の謎が解けてひりきりじゃいられなくなる・・・・・・・・・・・)
霧島礼子をまじえた宮島の初詣は非常に楽しかった。