サファイア12 ゴールドスロット


連日連勝、俺こと赤木大河は、今日もスロットで大勝だ。人は俺のことを黄金の右腕を

持つ男と言う。ハ、ハ、ハと笑いながら帰っていると俺の行く手を五、六人の怪しい男達

が待ち伏せしていた。

「しまった」俺は男たちに気づいた。俺は今日、いい気になって勝ち過ぎた。
「こりゃあ、袋叩きにされて、あり金全部取られるぞ」

俺は冷や汗をかいた。そこへ、金髪で中肉中背の四十歳くらいの男が現われた。そして、俺の行く手を阻もうとしていた男たちを次々に拳法で倒してゆく。アッと言う間にすべての男たちをノックアウトした。
「助かったぜ」俺は金髪の男に礼を言った。
「礼なら、リトル・ママに言ってくれ」
 ふと男の横を見ると、小柄な美しい少女が立っていた。本当は、少女ではなく、とても可憐で淡い少女のような大人であった。

「あんたが、リトル・ママ?」
「えぇ、大河、お礼が言いたいのなら、助けて欲しいことがあるの」
 (ふーん、こりゃ参ったな。なんか、もっと面倒なことに巻き込まれたみたい。俺の名前、知ってるし)
「正式な紹介が遅れたわね。私は、魔女リトル・ママ。金髪の彼は、ベニー。マーシャルアーツのチャンピオンで、私の用心棒よ」
「魔女にマーシャルアーツのチャンピオンか。凄いね。一体、俺に何をさす気かい?」
「大河、『ゴールド・スロット』を知ってる?」
 名のあるギャンブラーなら、誰もが知っている幻のスロット、『ゴールド・スロット』のことか。しかし、誰もどこにあるのか知らない幻のスロット。
「あァ、聞いたことはあるぜ。大当たり(777)を出したら、金貨のコインが777億円出てくるという。まァ、伝説だけどね」
「もし、伝説でなければ、挑戦して見る気はないか」リトル・ママは流石に魔女らしいことを言う。
 俺は背中がゾクッとした。不意に………なぜか急に眠気がした。

 ………俺は悪い夢を見たんだ。俺は起きると、たまげた。
 目の前に赤ちゃんがすやすやと寝ていた。後ろから俺の左肩を誰かが叩いた。振り向くと、ニヤリとベニーが笑ってる。やはり、夢じゃない。
「ベニーの赤ちゃんか?」と俺は言う。
「リトル・ママの娘だ」とベニーは答えた。
「大河、可愛いでしょう」とリトル・ママが答えた。
「って言うか、俺に魔法を使ったね。睡眠魔法」
「ゴメンね。話が長くなるので」
「わかったよ、この赤ちゃんが、すべてのネックなんだね」
「その通り。大河、頭いい。この赤ちゃんは、私の娘なのだが、ある時、私と敵対している邪悪な悪魔に『ゴールド・スロット』という呪いをかけられ、ずっと昏睡状態にいる。娘の夢の中にある封印された『ゴールド・スロット』というスロットを大当たり(777)させれば、すべての呪いは解かれ、彼女は目を覚ます」
 幻の『ゴールド・スロット』が、まさか赤ちゃんの夢の中に封印されていたとは。
「俺に『ゴールド・スロット』に挑めと」
「大河は、この世で一番の黄金の右腕を持つ男と聞いている」
「もし、失敗すれば……」

「私(リトル・ママ)・この娘・ベニー・大河、みんな命を失う」
「そりゃないぜ。俺は、降りた。はじめから乗ってないけど」と言った瞬間、ベニーの回し蹴りが俺を襲った。顔面に激痛が走り、鼻から血がしたたり落ちた。
「………汚いぜ、どのみち、俺の逃げ場はない」ふらふらで俺は喋った。
「お願い、私の娘を救って、大河」リトル・ママは哀願する。

リトル・ママの瞳からポロポロと涙が流れ落ちる。
「こういうの、俺、弱いんだァ」

ベニーが叫んだ。

「大河、やるのか、やらないのか。やれば、お前の生きる保障は五分五分。やらなければ、俺がお前を殺す」
「そんなもん、やるに決まってるだろ!」俺も叫んだ。
「ありがとう」リトル・ママが言う。
「俺は腹を決めたぜ。さて、リトル・ママ、どうやって娘さんの夢の中に入るんだい」

リトル・ママは、厳かに両手を合わせ、静かに呪文を唱え始めた。
「……ピース・オブ・セブン……ピース・オブ・セブン……」

銀色に周りが輝き出し、黄金の眩しい閃光がした。

気づくと俺はシンプルな真っ白な四角い部屋にベニーとリトル・ママといた。
「ここは、どこだ」と俺。
「私の娘の夢の中よ」とリトル・ママ。

いつの間にか、ベニーはどこからかスロットマシンを持ち上げていた。
「さて、大河、実力を見せてもらうよ。高速で回るリールを最初(右のリール)を目押ししてから、右・左・中の順番で三秒以内で大当たり(777)しなければならない」

はじめに目押ししてから、三秒以内に高速リールを大当たりしろか。とにかく、やるしかない。が、俺は、しばらく考えこんだ。それにしても、リールの回転が速すぎる。俺は、右の人差し指に、すべての『気』を集中させた。